あたしが画家になりたいと夢を見始めたのは小学校4年生の頃だった。


学校行事で美術館へ訪れたのがきっかけだ。


友人たちとおしゃべりをしながら沢山の有名な画家たちの絵を見て回った。


ただそれだけのイベントで終わらなかったのは、外国の画家が描いた人物画を見たからだった。


白いワンピース姿の女性が広い草原の中を走っている。


それはまるで写真を見ているように奇麗な絵だった。


女性は今にも動き出しそうで、草原のく咲花が風に揺れている様子も難なく想像できた。


「奇麗……」


絵の前で立ち止まり、呟く。


他の友人たちが次々と絵の前を通り過ぎて行っても、あたしはその場を動くことができなかった。


その絵との出会いは、あたしの人生を大きく変えた。


落雷に打たれたような強い衝撃を覚えたあたしは、翌日には絵を描き始めていたのだ。