「ユマちゃん？　あたし陽菜っていうの。ナオヤと同じクラスだよ」


あたしはできるだけ優しい口調で声をかけた。


中から返事はない。


「できたらちょっと話しがしたいの。実はあたしの幼馴染がすごくイジメられててさ、その原因がユマちゃんにサッカーボールを当てたからなの。ユマちゃんも覚えてるよね、雄大のこと」


そう言うと、中からゴトンッと何かの物音が聞こえてきた。


ユマちゃんが反応してくれているのかもしれない。


「でも、ユマちゃんは雄大とちゃんと和解してくれたもんね？　原因はユマちゃんの彼氏だったの。ナオヤはイジメが加速するようにみんなを誘導してたんだよ」


ナオヤの名前を出した瞬間、中から足音が聞こえてきてあたしは耳をすませた。


しばらくそのまま待っていると、カチャリと鍵の開く小さな音が聞こえてきた。


ドアから身を離すと、ユマちゃんが顔をのぞかせてくれたのだ。


しかし、その顔を見た瞬間あたしの思考回路は止まっていた。


ユマちゃんの頬はガリガリにこけて、目の下に真っ黒なクマができている。