その匂いに顔をしかめつつ「やっぱりね」と呟く。


汚れていない方の左手で鞄からピンク色のポーチを取り出すと、その中に少年Aの心臓を押し込めた。


心臓はとても元気で、ポーチの上からでもその鼓動がわかるほどだった。


次いで数珠を外すと、血まみれだった腕が奇麗に洗われていく。


あたしはぬけがらになった少年Aを見つめてほほ笑んだ。


「お前は赤子に戻った。これからどう生きていくかで魂が戻るかどうかが決まるだろう」


呆然と立ち尽くしている少年Aへ向けてそう言うが、少年Aは声が聞こえているのかどうかわからない。


反応は少しもなかった。


「今すぐカードを返しに行きなさい。それから、変な連中との付き合いはやめること。わかった?」


あたしがそう言うと、少年Aはようやく瞬きをして視線をあたしに合わせた。


「わかりました」


少年Aはなんの感情もあらわさず、ただ機械的にそう言うと、あたしに背を向けて歩き出したのだった。