「なにそれ、なにかのキャラクターのセリフ? そういうのが好きなの?」


あたしは返事をすることなく、右手を少年Aの心臓へと突き刺していた。


少年Aが一瞬にして表情をなくす。


右手にグニュグニュとした肉の感触がダイレクトに伝わってくる。


最初はこの感触が苦手でしかたなかったけれど、今はもう慣れてしまった。


あたしは右で腕を動かし、少年Aの肉をかきまわす。


手にからみつく血と肉と繊維。


それらを引きちぎるようにして少年Aの体の奥へと腕を進める。


グュチュッ……ブチッ……と、嫌な音を響かせながら、ようやくあたしの右手は彼の心臓まで到達した。


「あたしは魂取り。怪我れた魂を取りに来た」


右手にグッと力を込めて心臓をわしづかみにする。


筋肉そのものでできた心臓はドクドクと力強く動いている。


あたしはそれを無理やり体から引き剥がすのだ。


ベリベリと音を立てて剥離していく少年Aの心臓。


強く掴み過ぎて潰してしまわないよう、慎重に、だけど確実に汚れを取っていく。


やがて、右手は血まみれになりながらも少年Aの心臓を引きずり出していた。


ズルリと体外へ出てきた心臓は真黒に汚れていて、腐敗臭を放っている。