パーティーと言っても、火坑と美兎が到着するタイミングに始めるらしく、時間はそこまで気にしなくていいようだ。
けれど、パーティーと知ってしまった今。美兎は錦に着くまでそわそわしてしまっていた。
「ふふ、気になってしまいますか?」
栄の駅を降りた途端、火坑が小さく笑ったのだった。
「あ、すみません! その……恥ずかしながら、親しい人達とパーティーだなんて。学生時代もほとんどなかったので」
「おや。失礼ですが、大学もですけど、高校生とかでも?」
「その……夢に突っ走ってばかりで、あまり友人もいなかったんです」
まったくいなかったわけでもなかったが、夢であった今就職した会社に行くために。様々な青春を犠牲にしていた。だから、合間に少しだけ付き合っていた彼氏ともうまくいくわけはなく。
相手も悪かった部分もあったが、つまんない女だとレッテルを貼られてしまったくらいに。それを話せば、火坑が人混みの中なのに、ギュッと抱きしめてきた。
「き、響也さん!?」
いったい何を、と思っていると。ちょうど美兎の耳元に彼の顔があったのかくぐもった声が聞こえてきた。
「……そんなわけがありません。美兎さんは、とても魅力的な女性です」
「……響也さん?」
少しだけ腕の力が緩まったので、顔を覗き込めば彼は苦笑いでいた。
「僕と付き合って、よかったと思えるくらいに。これからもっと素敵な時間を過ごしましょう?」
「! はい!」
たしかに。
まだ新卒で大学を出てから一年も経っていないのに。妖達と関わり出したお陰で、美兎の色のなかった世界に少しずつ色が足されてきた。
それは、猫人の火坑と付き合い出してからもっとずっと。
改めて、彼の腕に抱きついてから界隈に行く道順を歩いて行ったが。彼の顔は、界隈に入ってもまだ人間のままだった。
「……戻さないんですか?」
「ふふ。とりあえず、今日ばかりは良いかと」
「?」
「少し、お久しぶりの方もいらっしゃいますからね? せっかくなので、変化の評価をしてもらおうかと」
「化けるのが、得意な人ですか?」
「美兎さん。人間だと化かされるで有名な妖、もとい妖怪はなんだと思いますか?」
「んー……狐、とか?」
「正解です。少々性格に難ありですが、バーテンダーの狐さんがいらっしゃるんです」
「バーテンダーですか!」
まだ界隈もだが、栄周辺のお洒落なBARにも行ったことがない。どうやら、霊夢の頼みで界隈の注目バーテンダーである狐狸の妖が出張してくれることになったそうだ。
無論、火坑とも顔見知りなので、知り合いではあるそうだが。性格に難ありとはどう言うことか。
それは、到着してからすぐにわかった。
「らっしゃい!」
「来たね!」
「お? らっしゃい!」
「あら〜ん? やっと来たのぉ〜?」
霊夢に蘭霊まではわかったが、今朝界隈で別れた座敷童子の真穂まで居て。
さらに、雪女で友達の花菜がいない代わりなのか。和装の楽養には不似合いの黒と紺で統一された、バーテンダーの制服を着ているおそらく男性。
と思うのは、口調がいわゆる『オネエ』だったからだ。今日出会った、烏天狗の翠雨に負けないくらいの美貌と背丈なのに。口調ですべて台無しにしているような気がして、美兎にはもったいなく映った。
とりあえず、彼が火坑の言っていた狐の妖らしい。
「こ、こんばんは。あの……バーテンダーさんははじめまして。私は、湖沼美兎と言います」
美兎が挨拶をすれば、バーテンダーの彼はぱあっと顔を赤らめたのだった。
「やだやだ! 火坑ちゃんの恋人の女の子、ちょー可愛いじゃなぁい!? それにあたしにも挨拶してくれるだなんて良い子ねん? こんな口調と也だけどぉ。あたしは狐狸……狐の宗睦よん? チカって呼んでもらってることが多いから、あんたもそう呼んでちょうだい?」
「え……と、じゃあ。チカさん?」
「んふふ〜〜! じゃあ、あたしは美兎ちゃんって呼んであげるん!……ちょっと、きょーちゃん? 化けは妖ならもっと華美になさいって言ったわよね? なんで、そんなフツメンちょい上くらいなの!?」
「ふふ。あまり目立つのは嫌なので」
「猫の顔ならイケメンなんだからん! 恋人出来たんだし、もっと素敵になさいな?」
「とは言え、この顔で目立つ場所に行き来しましたし」
「んもぉー!」
あと、火坑の行きつけの仕入れ先でもその化け方らしいので、今更と言うのもあるらしい。
それに、美兎も顔だけで火坑に惚れたわけでもないと告げれば、宗睦から熱い抱擁をされてしまった。
「わ!?」
「良い子過ぎるわ〜! 花菜の言ってた通りねん!?」
「ちょっと、宗睦さん? 僕の恋人に勝手に抱きつかないでください」
「チカとお呼び!」
「……チカさん」
「はいはい。出来立て熱々カップルの間に水刺す気はないわよん。とりあえず、ウェルカムドリンクだけ、ささっと作ってくるから」
と、あっさりと美兎を解放してから、カウンターの中に入って用意してたらしいウェルカムドリンクとやらを作り始めたのだった。
作る様子はもちろん見ていて楽しみになってきたが、美兎は気になっていたことを真穂に聞くことにした。
「真穂ちゃん、花菜ちゃんは?」
「んふふ〜! あいつにも春が来たのよ! 色々あったけど、ろくろ首の盧翔と付き合うことになったみたいよ!」
「え、いつ!?」
「今日の夕方前?」
「ええ!?」
「とりあえず、盧翔と話すのに少し遅れるそうだ。ついでに、盧翔まで連れてくるかもしんねーが」
「お、おおお、遅れました!!」
「霊夢の大将、すまねぇ!」
と、話が盛り上がってきたら本当に花菜と盧翔がやってきて。
美兎はおめでとう、と火坑と一緒に二人にお祝いの言葉をかけるのだった。
けれど、パーティーと知ってしまった今。美兎は錦に着くまでそわそわしてしまっていた。
「ふふ、気になってしまいますか?」
栄の駅を降りた途端、火坑が小さく笑ったのだった。
「あ、すみません! その……恥ずかしながら、親しい人達とパーティーだなんて。学生時代もほとんどなかったので」
「おや。失礼ですが、大学もですけど、高校生とかでも?」
「その……夢に突っ走ってばかりで、あまり友人もいなかったんです」
まったくいなかったわけでもなかったが、夢であった今就職した会社に行くために。様々な青春を犠牲にしていた。だから、合間に少しだけ付き合っていた彼氏ともうまくいくわけはなく。
相手も悪かった部分もあったが、つまんない女だとレッテルを貼られてしまったくらいに。それを話せば、火坑が人混みの中なのに、ギュッと抱きしめてきた。
「き、響也さん!?」
いったい何を、と思っていると。ちょうど美兎の耳元に彼の顔があったのかくぐもった声が聞こえてきた。
「……そんなわけがありません。美兎さんは、とても魅力的な女性です」
「……響也さん?」
少しだけ腕の力が緩まったので、顔を覗き込めば彼は苦笑いでいた。
「僕と付き合って、よかったと思えるくらいに。これからもっと素敵な時間を過ごしましょう?」
「! はい!」
たしかに。
まだ新卒で大学を出てから一年も経っていないのに。妖達と関わり出したお陰で、美兎の色のなかった世界に少しずつ色が足されてきた。
それは、猫人の火坑と付き合い出してからもっとずっと。
改めて、彼の腕に抱きついてから界隈に行く道順を歩いて行ったが。彼の顔は、界隈に入ってもまだ人間のままだった。
「……戻さないんですか?」
「ふふ。とりあえず、今日ばかりは良いかと」
「?」
「少し、お久しぶりの方もいらっしゃいますからね? せっかくなので、変化の評価をしてもらおうかと」
「化けるのが、得意な人ですか?」
「美兎さん。人間だと化かされるで有名な妖、もとい妖怪はなんだと思いますか?」
「んー……狐、とか?」
「正解です。少々性格に難ありですが、バーテンダーの狐さんがいらっしゃるんです」
「バーテンダーですか!」
まだ界隈もだが、栄周辺のお洒落なBARにも行ったことがない。どうやら、霊夢の頼みで界隈の注目バーテンダーである狐狸の妖が出張してくれることになったそうだ。
無論、火坑とも顔見知りなので、知り合いではあるそうだが。性格に難ありとはどう言うことか。
それは、到着してからすぐにわかった。
「らっしゃい!」
「来たね!」
「お? らっしゃい!」
「あら〜ん? やっと来たのぉ〜?」
霊夢に蘭霊まではわかったが、今朝界隈で別れた座敷童子の真穂まで居て。
さらに、雪女で友達の花菜がいない代わりなのか。和装の楽養には不似合いの黒と紺で統一された、バーテンダーの制服を着ているおそらく男性。
と思うのは、口調がいわゆる『オネエ』だったからだ。今日出会った、烏天狗の翠雨に負けないくらいの美貌と背丈なのに。口調ですべて台無しにしているような気がして、美兎にはもったいなく映った。
とりあえず、彼が火坑の言っていた狐の妖らしい。
「こ、こんばんは。あの……バーテンダーさんははじめまして。私は、湖沼美兎と言います」
美兎が挨拶をすれば、バーテンダーの彼はぱあっと顔を赤らめたのだった。
「やだやだ! 火坑ちゃんの恋人の女の子、ちょー可愛いじゃなぁい!? それにあたしにも挨拶してくれるだなんて良い子ねん? こんな口調と也だけどぉ。あたしは狐狸……狐の宗睦よん? チカって呼んでもらってることが多いから、あんたもそう呼んでちょうだい?」
「え……と、じゃあ。チカさん?」
「んふふ〜〜! じゃあ、あたしは美兎ちゃんって呼んであげるん!……ちょっと、きょーちゃん? 化けは妖ならもっと華美になさいって言ったわよね? なんで、そんなフツメンちょい上くらいなの!?」
「ふふ。あまり目立つのは嫌なので」
「猫の顔ならイケメンなんだからん! 恋人出来たんだし、もっと素敵になさいな?」
「とは言え、この顔で目立つ場所に行き来しましたし」
「んもぉー!」
あと、火坑の行きつけの仕入れ先でもその化け方らしいので、今更と言うのもあるらしい。
それに、美兎も顔だけで火坑に惚れたわけでもないと告げれば、宗睦から熱い抱擁をされてしまった。
「わ!?」
「良い子過ぎるわ〜! 花菜の言ってた通りねん!?」
「ちょっと、宗睦さん? 僕の恋人に勝手に抱きつかないでください」
「チカとお呼び!」
「……チカさん」
「はいはい。出来立て熱々カップルの間に水刺す気はないわよん。とりあえず、ウェルカムドリンクだけ、ささっと作ってくるから」
と、あっさりと美兎を解放してから、カウンターの中に入って用意してたらしいウェルカムドリンクとやらを作り始めたのだった。
作る様子はもちろん見ていて楽しみになってきたが、美兎は気になっていたことを真穂に聞くことにした。
「真穂ちゃん、花菜ちゃんは?」
「んふふ〜! あいつにも春が来たのよ! 色々あったけど、ろくろ首の盧翔と付き合うことになったみたいよ!」
「え、いつ!?」
「今日の夕方前?」
「ええ!?」
「とりあえず、盧翔と話すのに少し遅れるそうだ。ついでに、盧翔まで連れてくるかもしんねーが」
「お、おおお、遅れました!!」
「霊夢の大将、すまねぇ!」
と、話が盛り上がってきたら本当に花菜と盧翔がやってきて。
美兎はおめでとう、と火坑と一緒に二人にお祝いの言葉をかけるのだった。