普段から仕事でも料理をする火坑だが、菓子作りについてはやはり難しさを感じる。
特に、今回のような半分飴細工を作るような工程は殊更難しかった。
一瞬の時間で、その材料がダメになってしまうかもしれない。そこを考えると、火坑はいつも挑むスッポンを捌く工程と似ているなと思った。
あれは一瞬の隙をつかないと、噛まれて指を怪我するだけで済まないのだ。まだ料理人の修行時代、興味本位でスッポンに手を伸ばしたら、霊夢に盛大に拳骨をお見舞いされたものだ。
今回はその危険性はないが、食材をダメにしてしまう方が強かったので気が抜けなかった。
しかし、その工程が終われば。最後に切り分けるタイミングを逃さなければいい。
出来上がったフロランタンは、茶色い飴が美しく。アーモンドが花のように散らばって、とても美味しそうに見えた。
『おお〜!!』
赤鬼の隆輝以外、その出来栄えに思わず声を上げたのだった。
火坑が用意したコーヒーやカフェオレでそれぞれいただくことにした。
「へ〜? あの材料がこんなに綺麗になるんだ〜?」
初参加のであるダイダラボッチの更紗は、本当に子供のように目を輝かせていた。
「人間の女性にも好まれている菓子ですしね? チカの奴は可愛いのに目がないから、喜ぶと思いますよ?」
「あのお花のクッキーも美味しくて凄かったけど〜〜。これも綺麗で可愛い〜。あ、持ち帰る袋か何か貰える〜?」
「ラッピングなら、後で皆でしましょうか? とりあえず、まずは試食です」
それぞれ作った分を、試食用とラッピング用に分けて。まだまだビビっている盧翔はさて置き。
まずは、ひと口。
幾度か食べたことのあるフロランタンよりも、飴の部分が少々柔らかく。だが、パリパリとしていて、下のクッキー生地がほろほろ崩れてなんとも言い難い快感を得た。
スライスのアーモンドも香ばしくて、飴の甘さを少し抑えてくれた。火坑はブラックだが、更紗が飲んでいるような甘いカフェオレもいいだろう。
「うま!」
「美味しい〜〜!」
「ですよね?……あ」
「だから、そんな緊張しなくていいんだよ〜?」
「……すみません」
食べ物の前では、神も妖も関係ない。
そう思える、いいきっかけだったかもしれない。
「うんうん。良い出来。他の皆のも良いねえ? 俺負けそう〜」
「隆輝が負けたら、俺どうなんのさ?」
「僕だなんて、初心者だよ〜?」
「ははは。更紗様はセンスありますよー? もっと頑張れば、チカにも色々渡せるんじゃないですか?」
「ん? ん〜〜、僕普段は諏訪にいるからなあ〜?」
「……寒くないです?」
「こっちも寒いけど〜、雪がまだ降るしね〜?」
長野の寒さは、北陸程じゃないがまだまだ寒い季節だ。
名古屋は、濃尾平野からの山おろしがまだ続くので。京都ほどではないが、盆地特有の寒さで手がかじかむくらい。
火坑は、バレンタインプレゼントに美兎からもらったマフラーをずっと愛用しているが。手は猫毛に覆われているので平気は平気。
とここで、思い出したが。
付き合って、数ヶ月経つと言うのに。火坑の家には上がらせたことはあっても、逆に美兎の家には実家以外行っていない。
なら、今日はまだ昼過ぎだが。
最近、休日になると仕事の疲れで家で寝ていることが多いらしいので。
行ってみるか、とフロランタンを食べながら思った。
「隆輝さん」
「んー?」
「少々所用を思い出したので。先にラッピングしてから帰らせていただいてもいいですか?」
「いいよー?」
「ありがとうございます」
そのきっかけで、他の全員も解散することになり。後片付けから、簡単にラッピングして。それから火坑は人化して栄の町に足を運んだのだった。
特に、今回のような半分飴細工を作るような工程は殊更難しかった。
一瞬の時間で、その材料がダメになってしまうかもしれない。そこを考えると、火坑はいつも挑むスッポンを捌く工程と似ているなと思った。
あれは一瞬の隙をつかないと、噛まれて指を怪我するだけで済まないのだ。まだ料理人の修行時代、興味本位でスッポンに手を伸ばしたら、霊夢に盛大に拳骨をお見舞いされたものだ。
今回はその危険性はないが、食材をダメにしてしまう方が強かったので気が抜けなかった。
しかし、その工程が終われば。最後に切り分けるタイミングを逃さなければいい。
出来上がったフロランタンは、茶色い飴が美しく。アーモンドが花のように散らばって、とても美味しそうに見えた。
『おお〜!!』
赤鬼の隆輝以外、その出来栄えに思わず声を上げたのだった。
火坑が用意したコーヒーやカフェオレでそれぞれいただくことにした。
「へ〜? あの材料がこんなに綺麗になるんだ〜?」
初参加のであるダイダラボッチの更紗は、本当に子供のように目を輝かせていた。
「人間の女性にも好まれている菓子ですしね? チカの奴は可愛いのに目がないから、喜ぶと思いますよ?」
「あのお花のクッキーも美味しくて凄かったけど〜〜。これも綺麗で可愛い〜。あ、持ち帰る袋か何か貰える〜?」
「ラッピングなら、後で皆でしましょうか? とりあえず、まずは試食です」
それぞれ作った分を、試食用とラッピング用に分けて。まだまだビビっている盧翔はさて置き。
まずは、ひと口。
幾度か食べたことのあるフロランタンよりも、飴の部分が少々柔らかく。だが、パリパリとしていて、下のクッキー生地がほろほろ崩れてなんとも言い難い快感を得た。
スライスのアーモンドも香ばしくて、飴の甘さを少し抑えてくれた。火坑はブラックだが、更紗が飲んでいるような甘いカフェオレもいいだろう。
「うま!」
「美味しい〜〜!」
「ですよね?……あ」
「だから、そんな緊張しなくていいんだよ〜?」
「……すみません」
食べ物の前では、神も妖も関係ない。
そう思える、いいきっかけだったかもしれない。
「うんうん。良い出来。他の皆のも良いねえ? 俺負けそう〜」
「隆輝が負けたら、俺どうなんのさ?」
「僕だなんて、初心者だよ〜?」
「ははは。更紗様はセンスありますよー? もっと頑張れば、チカにも色々渡せるんじゃないですか?」
「ん? ん〜〜、僕普段は諏訪にいるからなあ〜?」
「……寒くないです?」
「こっちも寒いけど〜、雪がまだ降るしね〜?」
長野の寒さは、北陸程じゃないがまだまだ寒い季節だ。
名古屋は、濃尾平野からの山おろしがまだ続くので。京都ほどではないが、盆地特有の寒さで手がかじかむくらい。
火坑は、バレンタインプレゼントに美兎からもらったマフラーをずっと愛用しているが。手は猫毛に覆われているので平気は平気。
とここで、思い出したが。
付き合って、数ヶ月経つと言うのに。火坑の家には上がらせたことはあっても、逆に美兎の家には実家以外行っていない。
なら、今日はまだ昼過ぎだが。
最近、休日になると仕事の疲れで家で寝ていることが多いらしいので。
行ってみるか、とフロランタンを食べながら思った。
「隆輝さん」
「んー?」
「少々所用を思い出したので。先にラッピングしてから帰らせていただいてもいいですか?」
「いいよー?」
「ありがとうございます」
そのきっかけで、他の全員も解散することになり。後片付けから、簡単にラッピングして。それから火坑は人化して栄の町に足を運んだのだった。