父は起きたが、兄の海峰斗がなかなか起きない。
けれど、無理はなかった。海峰斗はある意味父親以上に酒を飲んでしまっていたのだから。
「芋、麦の焼酎ロック三杯にサワー。ウィスキーもロック三杯って……飲み過ぎでしょ!?」
「美兎さん、すみません。僕も止めるのが遅くて」
「響也さんはいいんです! まったく……お父さん達無茶しないでよ」
「いやー、すまん。俺より断然に若いのに、響也君の肝臓は強いね? わざわざ酔い覚ましの料理まで作れる余裕があるくらいだなんて」
「ふふ。全てではないですが、お客様達にも鍛えられたので」
「なるほど」
実際は人間ではなくて、猫由来の妖怪の類とは言えないが。
もし言うとしたら、それはおそらく火坑と結婚式を挙げる日辺り。随分と先のことなので、まだまだ美兎にとっても予定でしかないが。
「とりあえず、お味はどうですか? 濃すぎることは」
「いや! ちっともない!! 尾張の人間は総じて味噌味に慣れっこと思われがちだからね? こう言う優しい味わいは嬉しいよ。本当に、君はいつでも美兎の婿に来てくれ」
「お父さん、ちょっと!?」
「美兎もそう思っているんじゃないのか? 彼なら、って」
「そう言うけど……私、まだ二十三歳だし」
「大学の同級生で、在学中から婚約してすぐ結婚した友達がいただろう?」
「あの子は特殊!!」
高校生の時点で婚約してでも大学に合格して、卒業とともに結婚だなんてイレギュラー過ぎる。彼女をこの家にも連れてきたことがあるので、父親は印象深く思っただけだろうが。
「僕もいい歳ですが。まずは美兎さんを優先しますよ。新卒で仕事の楽しさやつらさを感じている今です。まだまだ結婚は早いと思っているんですよ?」
「君の店で働くことも出来るだろうに?」
「お父さん!?」
「美兎さんの夢はデザイナーさんですよ? 僕の店での仕事は悪く言えばバイトでも出来ます。が、場所が場所ですし、睡眠時間をかなり削りますからね? 美兎さんに体調を崩してほしくないんです」
「ふぅむ。なるほど……」
さすがは、普段は妖相手を接客しているプロの料理人。人間よりもはるかに生きているので、人間相手でもすぐに応対できる。その口回しのうまさに、美兎はますます彼に惚れてしまいそうだった。
なぜなら、己の欲望もあるが美兎を優先としてくれるのだから。
「ふぁ……? あ、れ……俺潰れてた??」
とここで、ようやく海峰斗が起きたのだった。
「おはよ、お兄ちゃん? 響也さんが雑炊作ってくれたよ? 食べる??」
「お? 食べる食べる!」
美兎と火坑中心の話題はここまでとなり、それからは夕飯前まで語り尽くし。
火坑は、明日からの仕込みがあるので早めに帰ることになり、美兎は今日は実家に泊まることになったのだが。
お風呂から上がってから、何故か海峰斗が部屋にやって来て土下座してきたのだ。
「お、お兄ちゃん??」
「美兎、一生のお願いだ! 真穂姉ちゃんと付き合いたいんだ!!」
「は、え!? なんでお兄ちゃんが真穂ちゃんのこと知ってるの!?」
話がうまく飲み込めないので、最初から説明してもらうと。海峰斗と真穂の意外な接点を知ることになったのだ。
美兎の知らないところで、どうやら幼馴染みであったらしい。
「潰れてた時に見た夢ん中でさ? 真穂……ちゃんがモロ好みの女の子に変身したんだぞ!? 惚れないわけがねーだろ!?」
「うん、わかった。落ち着こう!? それ本人に聞かれてるかもしれないんだよ!?」
「え、マジ!?」
「…………………マジのマジよ、おバカぽん兄妹?」
美兎の影から、今話題に上がってた座敷童子の真穂が何故か女子大生姿で出てきたのだった。
「真穂ちゃん!?」
「お!?」
「はあ……寝惚けてる時に、なんて話題出すのよ? 流石に真穂も恥ずかしいわ」
「……真穂ちゃんが?」
「美兎、失礼ね?」
「ごめんごめん」
けど、この様子はもしや。と、美兎もだが海峰斗も期待して待っていると。真穂は大きくため息を吐いた。
「真穂を妖怪と知った上で……本当に好きでいてくれるの??」
「おう! びっくりはしたけど、意外と拒絶反応とかねーんだ! 先に『真穂姉ちゃん』と夢でも会ってたからだと思う」
「……そう。考えておくわ。まずは、飲み友達からじゃダメ?」
「全然オッケー!!」
と言うわけで、妖怪と人間のカップルがある意味成立したことで。美兎の秘密を家族の誰よりも早く、兄が知る形になったのだった。
けれど、無理はなかった。海峰斗はある意味父親以上に酒を飲んでしまっていたのだから。
「芋、麦の焼酎ロック三杯にサワー。ウィスキーもロック三杯って……飲み過ぎでしょ!?」
「美兎さん、すみません。僕も止めるのが遅くて」
「響也さんはいいんです! まったく……お父さん達無茶しないでよ」
「いやー、すまん。俺より断然に若いのに、響也君の肝臓は強いね? わざわざ酔い覚ましの料理まで作れる余裕があるくらいだなんて」
「ふふ。全てではないですが、お客様達にも鍛えられたので」
「なるほど」
実際は人間ではなくて、猫由来の妖怪の類とは言えないが。
もし言うとしたら、それはおそらく火坑と結婚式を挙げる日辺り。随分と先のことなので、まだまだ美兎にとっても予定でしかないが。
「とりあえず、お味はどうですか? 濃すぎることは」
「いや! ちっともない!! 尾張の人間は総じて味噌味に慣れっこと思われがちだからね? こう言う優しい味わいは嬉しいよ。本当に、君はいつでも美兎の婿に来てくれ」
「お父さん、ちょっと!?」
「美兎もそう思っているんじゃないのか? 彼なら、って」
「そう言うけど……私、まだ二十三歳だし」
「大学の同級生で、在学中から婚約してすぐ結婚した友達がいただろう?」
「あの子は特殊!!」
高校生の時点で婚約してでも大学に合格して、卒業とともに結婚だなんてイレギュラー過ぎる。彼女をこの家にも連れてきたことがあるので、父親は印象深く思っただけだろうが。
「僕もいい歳ですが。まずは美兎さんを優先しますよ。新卒で仕事の楽しさやつらさを感じている今です。まだまだ結婚は早いと思っているんですよ?」
「君の店で働くことも出来るだろうに?」
「お父さん!?」
「美兎さんの夢はデザイナーさんですよ? 僕の店での仕事は悪く言えばバイトでも出来ます。が、場所が場所ですし、睡眠時間をかなり削りますからね? 美兎さんに体調を崩してほしくないんです」
「ふぅむ。なるほど……」
さすがは、普段は妖相手を接客しているプロの料理人。人間よりもはるかに生きているので、人間相手でもすぐに応対できる。その口回しのうまさに、美兎はますます彼に惚れてしまいそうだった。
なぜなら、己の欲望もあるが美兎を優先としてくれるのだから。
「ふぁ……? あ、れ……俺潰れてた??」
とここで、ようやく海峰斗が起きたのだった。
「おはよ、お兄ちゃん? 響也さんが雑炊作ってくれたよ? 食べる??」
「お? 食べる食べる!」
美兎と火坑中心の話題はここまでとなり、それからは夕飯前まで語り尽くし。
火坑は、明日からの仕込みがあるので早めに帰ることになり、美兎は今日は実家に泊まることになったのだが。
お風呂から上がってから、何故か海峰斗が部屋にやって来て土下座してきたのだ。
「お、お兄ちゃん??」
「美兎、一生のお願いだ! 真穂姉ちゃんと付き合いたいんだ!!」
「は、え!? なんでお兄ちゃんが真穂ちゃんのこと知ってるの!?」
話がうまく飲み込めないので、最初から説明してもらうと。海峰斗と真穂の意外な接点を知ることになったのだ。
美兎の知らないところで、どうやら幼馴染みであったらしい。
「潰れてた時に見た夢ん中でさ? 真穂……ちゃんがモロ好みの女の子に変身したんだぞ!? 惚れないわけがねーだろ!?」
「うん、わかった。落ち着こう!? それ本人に聞かれてるかもしれないんだよ!?」
「え、マジ!?」
「…………………マジのマジよ、おバカぽん兄妹?」
美兎の影から、今話題に上がってた座敷童子の真穂が何故か女子大生姿で出てきたのだった。
「真穂ちゃん!?」
「お!?」
「はあ……寝惚けてる時に、なんて話題出すのよ? 流石に真穂も恥ずかしいわ」
「……真穂ちゃんが?」
「美兎、失礼ね?」
「ごめんごめん」
けど、この様子はもしや。と、美兎もだが海峰斗も期待して待っていると。真穂は大きくため息を吐いた。
「真穂を妖怪と知った上で……本当に好きでいてくれるの??」
「おう! びっくりはしたけど、意外と拒絶反応とかねーんだ! 先に『真穂姉ちゃん』と夢でも会ってたからだと思う」
「……そう。考えておくわ。まずは、飲み友達からじゃダメ?」
「全然オッケー!!」
と言うわけで、妖怪と人間のカップルがある意味成立したことで。美兎の秘密を家族の誰よりも早く、兄が知る形になったのだった。