その日の俺は、放課後に入ってからも、ずっとイライラしていた。

一人理科室の扉を開け、乱暴に鞄をテーブルに置く。

大体、おかしくないか? 

なんで部長が一人で、孤独に大会出場の準備をしていて、他の部員は好き勝手してる? 

俺は棚から作りかけのマシンを取り出すと、黒いテーブルの上に置いた。

やたらと磨かれた銀のボディーは、あざ笑うかのように光る。

今からでも、やめられるもんなら、今すぐやめたい。

もう嫌だ。

どうせ出来ないし、完成しない。

鹿島たちには上手いことハッタリかましてあるし、大丈夫。

バレないから、もうやめよう。

校庭から聞こえてくる運動部の力強いかけ声が、憎らしいほど、うらやましい。

どうしてあんなに、気楽にやってられるんだ。

果てしなく腹が立つ。

鹿島たちが勝手に更新している学校SNSでは、1年たちの楽しそうな活動の様子が、スクールネットで繋がった世界に向けて、発信されていた。

ニューロボコンのハッシュタグまでつけて、他の出場校とも、なんとなくメッセージのやりとりまでして、交流が始まっている。

あいつらは一体、何様のつもりなんだ。

マシンの完成までほど遠い状況なのは、こっちも同じだが、部員の顔は写っていなくても、マシンの制作過程と楽しそうな様子だけは、作られたように伝わってくる。

鹿島たちのマシンは、本体部分まで完成していた。

足回りにタイヤとかはついていないから、自走は出来ないのだろう。

メインの回転式のローターは、それに挟まれたピンポン球が、真っ直ぐには飛ばずに、ヘンな軌跡を描いて、あちこちに跳び散らかっている。

用意された公式サイズの的は、制止して動かなかったけれども、まだまだ正確に当てられるようになるまでには、先が長そうだ。