日が昇って、外の気温はわずかに上昇していた。

受付の混雑は最高潮に達していて、そういう意味では、やっぱり早めに来ておいてよかったんだと思った。

体育館の周りをぐるっと一周したところで、何かが変わるわけでもないのに、じっと座っているのが苦手なのだから仕方がない。

2つある出場者受付の窓口には、長蛇の列が出来ていた。

意味もなくしゃがみ込み、入り口の壁にもたれてその様子を見ている。

ここへ来る誰もが、全く同じ段ボールを大切に抱えているのが、不思議な気がした。

サイズ規定で、審査時間短縮のために、参加者全員に配布されたものなのだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど、ここへ来る誰もが抱えるあの同じ箱の中身には、それぞれの異なった大切な時間が込められていると思うと、余計に不思議な気分になる。

「おっ、吉永!」

1年軍団を引き連れて、山崎がやって来た。

「なんだよお前、受付は?」

「もう鹿島が済ませた」

「じゃ、入ろうぜ」

観客席と出場者席は分かれていて、鹿島のマシンのセッティングを手伝う1年2人と、山崎だけが俺についてきた。

いつの間にかぎしぎしに詰まったパイプ椅子の列に、1席だけ空けた5人が座る。

会場のアナウンスが、出場順位のくじ引きを告げていた。

「くじ引き、お前が行って来て」

山崎にそう言ったら、彼は首を横に振った。

「やだよ。俺、めっちゃクジ運悪いもん」

俺の膝にあった段ボールを取り上げ、山崎は自分の膝に抱える。

「ほら、早くお前が行ってこいよ」

俺から取り上げた膝の上の段ボールの、さらにその上に自分のあごをのせ、てこでも動かない構えだ。

隣では当たり前のように、鹿島が立ち上がる。

俺と鹿島の目があって、仕方なく立ち上がった。

「お前が先に引け」

言われた鹿島は、箱の中に手を突っ込んだ。

小さく折られた紙を広げる。

「6-2です」

体育館の会場は小さく6つに区切られていて、そこで一斉に競技が行われる。

床にテープで区切られただけのフィールド横に、審査員の座る席が用意され、その指示によって競技が進行していく。

審査される内容は、得点、アイデア、技術の三要素だ。

的は主催者側が用意した的を使用する。

「俺は3-5だ」

鹿島たちの方が早い。

第6会場の2番目と、第3会場の5番目だ。

「出場順位、3番までの方は、それぞれのフィールド横に準備をお願いします」

 いよいよ、予選会が始まった。