-side 田島亮-
翔の内部告発により、帰るという選択肢を失った俺は現在新聞部室へアリス先輩と一緒に向かっている。
「アリス先輩、1つ確認したいんですけど例の写真拡散したりしてませんよね?」
「もちろんだよ。それに新聞部室に来てくれたらこの写真は端末から消すつもりだよ」
「なんでそこまでして俺を部室に来させようとするんですかね...」
「それはヒミツ♪」
「そんなぁ...」
いつものことだがこの人の行動は本当に予想がつかないし意図も読めない。マジで何がしたいのか分からない。
そしてアリス先輩は困惑している俺を気にも留めずに話を続けた。
「でもさぁー、ダーリンは私というハニーがいるにも関わらず従姉妹ちゃんとデートに行ってたのかぁー。浮気は感心しないなー」
「ちょっと待って下さい。勝手に俺たちが結婚してることにするのはやめて下さい」
「うふふ、照れなくてもいいのに」
相変わらず話が通じねえな...
「まあ確かに私たちはまだ付き合ってもないよね」
「え、急に冷静になったりしてどうしたんですか?熱でもあるんですか?」
「し、失礼ね!私だっていつもハイテンションってわけじゃないんだから!」
「え?マジっすか?」
「だって私たちが付き合ってないっていうのは事実じゃん...」
アリス先輩が珍しくシュンとしている。いつも色々振り回されてるから忘れがちだけどさ、こうやって眺めてる分にはこの人めっちゃかわいいんだよな...
でも確かにアリス先輩の言う通り、『好きだ』とは何回も言われているが、『付き合って』とはまだ一回も頼まれたことが無いな。なぜだ?
「ふふ、『じゃあなんでアリス先輩は交際を申し込んで来ないんだろう』とでも考えてそうな顔だね」
「えっ!?い、いや!そういうわけじゃないですよ!」
「ふふ、隠さないでもいいのに」
ん!?俺そんなに考えてる事が顔に出てたか!?
思考を見抜かれて驚いていると、隣を歩いているアリス先輩の横顔が急に真剣な表情に変わった。
「私がまだダーリンに『付き合ってください』って言わないのにはちゃんとした理由があるの」
「理由...ですか」
「うん。だってさ、私たちって出会ってまだ2ヶ月しか経ってないじゃん。まだダーリンが知らない私の一面もあると思うし、私が知らないダーリンの一面もあると思うんだよね」
「まあ、それは確かにそうですね」
「だからまだ『付き合って下さい』なんて言う段階じゃないと思うし、仮に今真剣に告白しても振られちゃうと思うの」
「...」
アリス先輩がここまで真剣な表情で俺に話をするのは初めてのことだった。
しかし、内容が内容なだけに俺は彼女の話に対して全く反応することができなかった。
そしてアリス先輩が話し終えるのと同時に俺たちは新聞部室の前に到着した。
「ねえ、ダーリン。部室に入る前に1つ言っておきたいことがあるの」
アリス先輩は入り口の扉の前で立ち止まってそう言うと、突然俺の顔をじっと見つめてきた。
「今はまだ『付き合って下さい』なんて言わない。でもね、いつか必ず私は君に真剣に交際を申し込むよ」
「...!」
「だからね、ちゃんと真剣に告白できるように私は君のことをもっと知りたいの」
...これはやばい。聞いてるこっちの方が恥ずかしくなってくる。なんかドキドキしてきた。
そして先輩はそんな風に動揺している俺のことなんか気にすることもなく、さらに話を続けた。
「そしてもっと私のことを知ってほしいって思ってるの。だから私はこれからも今まで通り君のことが好きだって伝え続けるよ。1人の女の子として魅力的だと思ってもらえるようにアピールする。絶対に私のことを好きにさせてやるんだから!」
...アリス先輩。急にそんなこと言うのは反則じゃないですか。調子が狂うんでいつものハイテンションに戻ってくださいよ。そんなこと突然言われるこっちの身にもなって下さい。
...正直いつもとのギャップで今のセリフの破壊力ハンパなかったっす。
「うふふ、ダーリン久しぶりに顔真っ赤になってる。やっぱり私のダーリンはかわいいわね!」
「う、うるせえ!あんなの聞いたら誰だって恥ずかしくなるわ!アンタは恥ずかしくないのかよ!」
「え?別に恥ずかしくないよ?だってさっき言ったこと全部本心だもん」
「え...」
こんなに分かりやすい好意を向けられるとそれはそれで反応に困る。この人は一体俺のどこを見てそんなに好きになったんだろう。
...でも困惑してるだけじゃダメだよな。この人の想いに対する答えを出さなければならない日はいつか必ず来るんだ。これからはもっとアリス先輩の好意と真剣に向き合わないといけないかもな。
「ダーリン?なにボーッとしてるの?そろそろ部室入ろ!」
少々物思いに耽り過ぎたようだ。突っ立ったままの俺を見兼ねたアリス先輩から早く部室に入るように促された。
「はいはい、わかりましたよ。今すぐ入りますから」
「おっけー!じゃあ入ろう!」
そして俺は入口の扉を開けたアリス先輩の後ろに続いて部室の中に入った。
ーーー------------------------
「部長!そのお方が田島亮くんでありますか!」
「顔は悪くないアル。でもなんか冴えない男ネ」
新聞部室に入るといきなり変な喋り方の女子2人に出迎えられた。おい、開幕からパンチ強すぎるだろ...
「あのー、アリス先輩?この方々は誰ですか?」
「この子達はウチの新聞部員よ!」
「はあ、なるほど...」
「ほら二人とも!ダーリンに自己紹介して!」
「はい!ではワタクシから自己紹介させていただくのであります!」
アリス先輩に促され、まずは赤髪短髪でやや低身長の美少女が俺の目の前に来た。
「ワタクシは相川瀬奈と申します!田島くんと同じ1年生であります!ちなみに趣味は陶芸であります!」
「え?陶芸?」
「はい!ワタクシは時々おじいちゃんの家で陶芸をしているのであります!あの泥のヌルヌルした感覚がたまらなく気持ちいいのであります!ウヘヘェ...ウヘヘェ...」
「そ、そうなんだ...」
うわぁ...この子はアリス先輩とはまた違うベクトルの変人だな...
「じゃあ次はワタシの番ネ」
相川さんの自己紹介が終わると今度はおかっぱ頭の美少女が俺の目の前に来た。身長は先程挨拶してくれた相川さんと同じくらいだ。
「ワタシの名前はリン・ユーチン。お前と同じ1年生ネ」
「あ、もしかしてリンさんって留学生?」
「普通名前聞いたら分かるネ。どう見てもワタシ中国人ネ。お前バカアルか?」
「は、はは...バカでごめんね...」
「お前バカなのによく天明高校に入れたネ。裏口入学アルか?」
「いや、特待生という制度があってね...」
えぇ...初対面なのになんで俺この子にボロクソ言われてるの...
「コラ!リンちゃん!口が悪いよ!気をつけなさいっていつも言ってるでしょ!」
俺がリンさんの態度に困惑しているとアリス先輩が間に入ってくれた。
「ご、ごめんなさいアル...」
リンさんはアリス先輩に喝を入れられると素直に謝ってくれた。どうやらアリス先輩のことは慕っているようだ。
「ダーリンもリンちゃんのことを悪く思わないであげてね。この子思ったことを全部口に出しちゃうの。でも根はいい子なんだ。だから許してあげてほしいな」
「まあ大丈夫ですよ。俺そんなに怒ってないんで」
リンさんはアリス先輩に指摘されたらすぐに謝ってくれたし根が良い子だというのは多分本当なんだろう。
...まあ俺的には女の子に罵倒されても逆にご褒美になるからあんまりその辺気にしてないんですけどね。
「それにしても新聞部員って皆個性が強いですね...」
「ふふ、確かに瀬奈ちゃんとリンちゃんは個性的よね」
...俺はアンタのことも含めて言ったつもりだったんだけどな。
「ところでアリス先輩、そろそろ俺をここに呼び出した理由を教えてもらってもいいですか?」
「あー、そういえばまだ話してなかったわね!私がダーリンを呼んだのはね、この4人でゲームをするためなの!」
「ゲーム...?一体何のゲームをするんですか?」
俺のこの質問には残りの新聞部員2人が答えてくれた。
「皆で双六をするのであります!もう机の上で準備万端であります!」
「新聞部員3人で作ったオリジナル双六ネ。絶対面白いアル」
「な、なるほど...」
ちょっと待て、この変人3人衆が作った双六だと...なんかロクでもない作りになってる予感しかしないんだが...本当に大丈夫なのか...?
翔の内部告発により、帰るという選択肢を失った俺は現在新聞部室へアリス先輩と一緒に向かっている。
「アリス先輩、1つ確認したいんですけど例の写真拡散したりしてませんよね?」
「もちろんだよ。それに新聞部室に来てくれたらこの写真は端末から消すつもりだよ」
「なんでそこまでして俺を部室に来させようとするんですかね...」
「それはヒミツ♪」
「そんなぁ...」
いつものことだがこの人の行動は本当に予想がつかないし意図も読めない。マジで何がしたいのか分からない。
そしてアリス先輩は困惑している俺を気にも留めずに話を続けた。
「でもさぁー、ダーリンは私というハニーがいるにも関わらず従姉妹ちゃんとデートに行ってたのかぁー。浮気は感心しないなー」
「ちょっと待って下さい。勝手に俺たちが結婚してることにするのはやめて下さい」
「うふふ、照れなくてもいいのに」
相変わらず話が通じねえな...
「まあ確かに私たちはまだ付き合ってもないよね」
「え、急に冷静になったりしてどうしたんですか?熱でもあるんですか?」
「し、失礼ね!私だっていつもハイテンションってわけじゃないんだから!」
「え?マジっすか?」
「だって私たちが付き合ってないっていうのは事実じゃん...」
アリス先輩が珍しくシュンとしている。いつも色々振り回されてるから忘れがちだけどさ、こうやって眺めてる分にはこの人めっちゃかわいいんだよな...
でも確かにアリス先輩の言う通り、『好きだ』とは何回も言われているが、『付き合って』とはまだ一回も頼まれたことが無いな。なぜだ?
「ふふ、『じゃあなんでアリス先輩は交際を申し込んで来ないんだろう』とでも考えてそうな顔だね」
「えっ!?い、いや!そういうわけじゃないですよ!」
「ふふ、隠さないでもいいのに」
ん!?俺そんなに考えてる事が顔に出てたか!?
思考を見抜かれて驚いていると、隣を歩いているアリス先輩の横顔が急に真剣な表情に変わった。
「私がまだダーリンに『付き合ってください』って言わないのにはちゃんとした理由があるの」
「理由...ですか」
「うん。だってさ、私たちって出会ってまだ2ヶ月しか経ってないじゃん。まだダーリンが知らない私の一面もあると思うし、私が知らないダーリンの一面もあると思うんだよね」
「まあ、それは確かにそうですね」
「だからまだ『付き合って下さい』なんて言う段階じゃないと思うし、仮に今真剣に告白しても振られちゃうと思うの」
「...」
アリス先輩がここまで真剣な表情で俺に話をするのは初めてのことだった。
しかし、内容が内容なだけに俺は彼女の話に対して全く反応することができなかった。
そしてアリス先輩が話し終えるのと同時に俺たちは新聞部室の前に到着した。
「ねえ、ダーリン。部室に入る前に1つ言っておきたいことがあるの」
アリス先輩は入り口の扉の前で立ち止まってそう言うと、突然俺の顔をじっと見つめてきた。
「今はまだ『付き合って下さい』なんて言わない。でもね、いつか必ず私は君に真剣に交際を申し込むよ」
「...!」
「だからね、ちゃんと真剣に告白できるように私は君のことをもっと知りたいの」
...これはやばい。聞いてるこっちの方が恥ずかしくなってくる。なんかドキドキしてきた。
そして先輩はそんな風に動揺している俺のことなんか気にすることもなく、さらに話を続けた。
「そしてもっと私のことを知ってほしいって思ってるの。だから私はこれからも今まで通り君のことが好きだって伝え続けるよ。1人の女の子として魅力的だと思ってもらえるようにアピールする。絶対に私のことを好きにさせてやるんだから!」
...アリス先輩。急にそんなこと言うのは反則じゃないですか。調子が狂うんでいつものハイテンションに戻ってくださいよ。そんなこと突然言われるこっちの身にもなって下さい。
...正直いつもとのギャップで今のセリフの破壊力ハンパなかったっす。
「うふふ、ダーリン久しぶりに顔真っ赤になってる。やっぱり私のダーリンはかわいいわね!」
「う、うるせえ!あんなの聞いたら誰だって恥ずかしくなるわ!アンタは恥ずかしくないのかよ!」
「え?別に恥ずかしくないよ?だってさっき言ったこと全部本心だもん」
「え...」
こんなに分かりやすい好意を向けられるとそれはそれで反応に困る。この人は一体俺のどこを見てそんなに好きになったんだろう。
...でも困惑してるだけじゃダメだよな。この人の想いに対する答えを出さなければならない日はいつか必ず来るんだ。これからはもっとアリス先輩の好意と真剣に向き合わないといけないかもな。
「ダーリン?なにボーッとしてるの?そろそろ部室入ろ!」
少々物思いに耽り過ぎたようだ。突っ立ったままの俺を見兼ねたアリス先輩から早く部室に入るように促された。
「はいはい、わかりましたよ。今すぐ入りますから」
「おっけー!じゃあ入ろう!」
そして俺は入口の扉を開けたアリス先輩の後ろに続いて部室の中に入った。
ーーー------------------------
「部長!そのお方が田島亮くんでありますか!」
「顔は悪くないアル。でもなんか冴えない男ネ」
新聞部室に入るといきなり変な喋り方の女子2人に出迎えられた。おい、開幕からパンチ強すぎるだろ...
「あのー、アリス先輩?この方々は誰ですか?」
「この子達はウチの新聞部員よ!」
「はあ、なるほど...」
「ほら二人とも!ダーリンに自己紹介して!」
「はい!ではワタクシから自己紹介させていただくのであります!」
アリス先輩に促され、まずは赤髪短髪でやや低身長の美少女が俺の目の前に来た。
「ワタクシは相川瀬奈と申します!田島くんと同じ1年生であります!ちなみに趣味は陶芸であります!」
「え?陶芸?」
「はい!ワタクシは時々おじいちゃんの家で陶芸をしているのであります!あの泥のヌルヌルした感覚がたまらなく気持ちいいのであります!ウヘヘェ...ウヘヘェ...」
「そ、そうなんだ...」
うわぁ...この子はアリス先輩とはまた違うベクトルの変人だな...
「じゃあ次はワタシの番ネ」
相川さんの自己紹介が終わると今度はおかっぱ頭の美少女が俺の目の前に来た。身長は先程挨拶してくれた相川さんと同じくらいだ。
「ワタシの名前はリン・ユーチン。お前と同じ1年生ネ」
「あ、もしかしてリンさんって留学生?」
「普通名前聞いたら分かるネ。どう見てもワタシ中国人ネ。お前バカアルか?」
「は、はは...バカでごめんね...」
「お前バカなのによく天明高校に入れたネ。裏口入学アルか?」
「いや、特待生という制度があってね...」
えぇ...初対面なのになんで俺この子にボロクソ言われてるの...
「コラ!リンちゃん!口が悪いよ!気をつけなさいっていつも言ってるでしょ!」
俺がリンさんの態度に困惑しているとアリス先輩が間に入ってくれた。
「ご、ごめんなさいアル...」
リンさんはアリス先輩に喝を入れられると素直に謝ってくれた。どうやらアリス先輩のことは慕っているようだ。
「ダーリンもリンちゃんのことを悪く思わないであげてね。この子思ったことを全部口に出しちゃうの。でも根はいい子なんだ。だから許してあげてほしいな」
「まあ大丈夫ですよ。俺そんなに怒ってないんで」
リンさんはアリス先輩に指摘されたらすぐに謝ってくれたし根が良い子だというのは多分本当なんだろう。
...まあ俺的には女の子に罵倒されても逆にご褒美になるからあんまりその辺気にしてないんですけどね。
「それにしても新聞部員って皆個性が強いですね...」
「ふふ、確かに瀬奈ちゃんとリンちゃんは個性的よね」
...俺はアンタのことも含めて言ったつもりだったんだけどな。
「ところでアリス先輩、そろそろ俺をここに呼び出した理由を教えてもらってもいいですか?」
「あー、そういえばまだ話してなかったわね!私がダーリンを呼んだのはね、この4人でゲームをするためなの!」
「ゲーム...?一体何のゲームをするんですか?」
俺のこの質問には残りの新聞部員2人が答えてくれた。
「皆で双六をするのであります!もう机の上で準備万端であります!」
「新聞部員3人で作ったオリジナル双六ネ。絶対面白いアル」
「な、なるほど...」
ちょっと待て、この変人3人衆が作った双六だと...なんかロクでもない作りになってる予感しかしないんだが...本当に大丈夫なのか...?