「見て! 豊明君よ!」
「いつ見ても素敵!」
「クールで格好良くて、最高!」
 颯爽と高校の廊下を歩き、女子生徒たちの視線を独り占めする学ラン姿の男子。
 高校二年生の豊明(とよあけ)純希(じゅんき)は、長身のイケメンで、さらさらヘア、テストの順位は学年一位、運動神経抜群で、更に生徒会長という、クールで無口な完璧イケメンだ。
 ――と、周囲から思われているが、実は――
(クールで格好良い、ねぇ……)
 心の中でそう呟くと、豊明は小さくため息を漏らす。
 豊明は“クールで無口”なのではなく、ただ単に、“他人と喋ろうとすると緊張して言葉が出て来ない”というだけだった。
 だが、女子たちは、それを「クールで格好良い」と感じていた。
 ちなみに男子たちは、そんな彼を「クールを気取ったいけ好かない奴」だと断定し、女子たちからの圧倒的な人気に対する嫉妬もあり、敵視していた。

 女子たちからの圧倒的な人気とは裏腹に、豊明は孤独な学園生活を送っていた。
(今日も、ぼっちか……)
 昼休憩になり、教室の隅にある自分の席で、一人で昼食を食べる豊明。
 そう、豊明には、友達が一人もいなかった。
 男の敵である、と、敵視して来る男子たちは勿論、女子生徒たちも、豊明は“憧れの存在”であり、気軽に友達になる対象では無かったのだ。
 ただ、他の生徒たちばかりを責めるのは筋違いというものだろう。
 豊明は、友達を作ろうという努力をしていなかったからだ。
 そもそも、緊張して他人と話せない彼は、可能な限り他者との接触を避けていたのだ。
 そんな状況で、友達など出来るはずもない。

 その後。
 授業が全て終わり、豊明は生徒会室で役員たちと、来たるべき体育祭に備えるための【会議を行った】。
 会議終了後、豊明は生徒会室を最後に出て、電気を消した。
 そして、秋風の吹く中、一人寂しく帰路に就いた。