『初恋』と聞いて一番最初に思い出すのはガソリンの匂い。そして、汚れた作業着の後ろ姿。 
 それでいて相手が一つ歳上の女子高生だったと言うのだから、自分も随分と変わった人に恋心を抱いてしまったものだと今でもつくづく思う。
 
 自称天才発明家だった彼女はもうこの世界にはいないけれど、彼女はその短い生涯の中で、数えきれないほどの発明品を生み出した。
 今思い返してもどれも笑ってしまうようなふざけた発明品ばっかりだったけれど、それでも彼女が偉大な発明家だったということだけは間違いない。

 なぜなら彼女は、俺がほんの思いつきで言った、『初恋を閉じ込める』という馬鹿げたアイデアを、その純粋な想い一つで本当に実現してしまったのだから……