明日は学校来るんだよね?
   お昼、一緒に食べない?

   
 そこまで打ってから、こう付け足す。

     
   話したいことがあるの。


 すると、返事は少し遅れてきた。


   しょーがねえな。
   一緒に食べてやるか。


 私はその返事に、思わず頬が緩んでしまったけど、戦いはまだこれから!
 私はそう思って、「よし」と気合いを入れた。
 決戦は、明日のお昼休み。

 次の日、お昼休みがやってきた。
 緊張しながら屋上の扉を開けると、視界に八王子の姿が目に飛び込んでくる。
「来たか」
 そう言って笑う八王子の額には【話ってなんだろう】と書かれてあった。
 私も八王子も地べたに座り、お弁当を開ける。
「ねえ、八王子さ、ギーちゃんって知ってる?」
「ああ、北海道に父方の祖父母が住んでてな。去年の夏休み、まだ萌が病気じゃなかった頃に受験生の俺以外は、祖父母の家に行ったんだよ」
「その時に?」
「そう。萌がこれ買ってきてさ。なーんだこの変な趣味、と思ったんだけど、その直後に萌が入院して」
「そうだったんだ……」
 私が俯くと、八王子は続ける。
「これをくれた時の萌に戻ってほしいって、お守り代わりにつけてるんだ」
「ロケットのペンダントも、お守りってこと?」
「実はこれ、お袋のものなんだよ。自分はなくすからって俺に身につけておいてくれ、縁起がいいからってさ」
「え? そういう理由なの? シスコンではないの?」
「シスコンですが?」
 八王子は真顔で言った。
【シスコンだ】と額にも書いてある。
「ああ、そうですか」
「シスコンじゃなければ、妹がくれたお土産をカバンにぶら下げないし、ペンダントだってつけてないだろ」
 八王子はさも当然のように言った。
 まあ、家族を大事にするのは良いことだけどさ。
 これは、告白しても玉砕かなーと思っていたら、八王子が模型のような景色を眺めながら続ける。
「でも、最近はシスコンも随分とマシになった」
「え? そうなの?」
「うん。萌は家族として大事」
「それが自然な感情だよね」
 私が言うと、八王子は「まあな」と笑った。
「俺、シスコンは卒業、できそうだな」
「そうなの?」
 私が八王子の顔を見ると、額にはこう書かれてある。
【だって好きな人、できたしな】
 その本音にドキリとした。