「うーん。どうしたらいいんだろう」
 私はその場にしゃがみこんで考え込んだ。
 
「二時間しか寝てない……」
 私はそう呟いて大きなあくびをする。
 時刻は朝七時ちょうど。 
 もう少し眠りたいところだけど、色々と準備をして待ち合わせ場所まで向かうとなると九時には家を出たい。
 じゃあ、八時には起きなきゃなあ。
「あと一時間かあ」
 私はそう呟き、大きく伸びをした。
 もう起きてしまおう。
 クローゼットの前の床は服が散乱していた。
 あのあと、散々、服に悩んで、決まったのが午後三時過ぎ。
 それからメイクの動画を見ていたら窓の外はすっかりと明るくなっていた。
 ようやく寝たのが午後五時。
 私はあくびを連発しながら準備を始めた。

 待ち合わせ場所には、午後九時四十分に着いた。
 駅前広場には、まだ八王子の姿はない。
 なんだかドキドキするな。
 それは、八王子と出かけるからではない。
 買ってから一度も着ていない服で外にいるからだ。
 結局、私はあーでもないこーでもないと服を選んだ結果。
 薄いピンク色の生地に胸の上にちょこんと水色のリボンがついたイラストのあるTシャツにジーンズ、ジーンズ生地のサンダルに、白いショルダーバッグポシェットというところで落ち着いた。
 それから私は、三十秒起きにスマホを確認。
 スマホは今日は静かだ。
「今日は朝から一度もメッセージが来ないなあ」
 そう呟いて、小さくため息。
 そこで私は、ん? と首を傾げる。
 なぜため息をつくんだ。別にメッセージは来なくてもいいのに。
 今日、妹さんの誕生日プレゼント選びが終わったら、メッセージをやりとりする理由もなくなる。
 だからもう八王子からもメッセージは来ないだろう。
 うん、私も既読スルーしなくて済む。
 うんうんと頷いたところで、額に汗がにじんでいることに気づく。
 今日は随分と暑い。
 太陽がじりじりと容赦なく照り付けて、日焼け止めなんか効果がなさそう。
「次の電車までまだ時間あるからコンビニに入ろ」
 私はコンビニに入ることにした。
 ついでに自分の分のジュースとそれから、ついでに八王子の分のジュースも買っておいてあげるか。
 私は二本のペットボトルを手に、鼻歌混じりにレジへと向かった。
 だからなんで鼻歌?!
 私はハッとして、何事もなかったかのようにレジの列に並んだ。