まるで八王子からのメッセージを待っているみたいな……。
「それはない!」
 私はそう言いきって、ベッドから勢い良く跳ね起きる。
 そもそも、皐月の好きな人とメッセージのやりとりなんかしていいのかな。
 しかも、本人はこのことを知らないし。
 妹さんへのプレゼントを選ぶ、というのだって微妙だし、皐月には言えないのに。
 自分が皐月の立場だったら、きっと怒るというよりはガッカリすると思う。
「ああ、そうか。皐月も誘えばいいのか」
 私はそう思って、皐月を誘うことにした。
 皐月に『今週の土曜日、空いてるー?』と送ると、『なになに? デートのお誘い?』と冗談めかした返事。
 八王子君の妹さんのプレゼントを選ぶのに付き合ってほしい、という事情を説明する。
 すると皐月は、こう返事をしてきた。
 

   ごめん、その日、バイト入ってた。
   二人で行ってきてー。


 そのメッセージを読み終えると、私はなぜかホッとする。
 なんでここで安堵するんだ?
 むしろ『えー、皐月が来られないんじゃ私も行かない』とか言うところじゃないのか。
 それに皐月もあんまり気にしないんだなあ。
 やっぱり、『妹さんのプレゼント選び』というのが、緊張感がないどころかシスコンが滲み出てるってことかな。
 デートじゃあ、ないもんな。
 私はそう思って、再びベッドに寝転んだ。
 目を閉じると、ふと皐月との思い出がよみがえる。

 中学一年生の時、私が男子にイジメられていたのを、皐月が助けてくれたんだよね。
『あんた達、みっともないよ!』と背中に飛び蹴りをいれてくれたのだ。
 とてもきれいな飛び蹴りだった。
 ……じゃなくて、何も言い返せない私とは正反対の皐月を心底、尊敬した。
 それからも、皐月は『なにかあったら私に言いなよ? 今度は竹刀で撃退したげるから!』と言ってくれたのだ(当時、皐月は剣道部)
 心強い味方から、親友になり、私は皐月に感謝してもしきれない。
 だから、こうして彼女の恋のキューピッドになろうとしたのに。
 私、何やってんだろ。
 どちらにしても、妹さんの誕生日プレゼント選びが終わったら、二人で出かけるということないか。
 そんなことを考えて、私はスマホを枕元に置く。
 すると、メッセージの音についつい反応してしまう。
 あて先は八王子から。
 内容は……。