私がそう思っていると、シスコンが思い出したように言う。
「明日は、橘さん来られるの?」
「大丈夫だと思うけど」
「じゃあ、明日を楽しみにしておく。華があるのは大歓迎」
「はいはい。悪かったよ、雑草で」
「雑草ってゆーかラフレシア」
「女子に言う台詞じゃないよね」
「脅せば一緒に飯を食ってもらえると思っているような奴は女子ではない」
「ああ、そうですか」
 私がそう言って、イチゴミルクを飲み干すとシスコンは立ち上がる。
「じゃあ、また明日。明日は是非、是非、橘さんを連れてきてくるがいい」
「妹さんに言うぞ」
「……つーか、俺への妹の愛は、その辺の女子とは比べものにならないんだけど」
 額に【萌についてなら、丸一日は語れる】という本音があった。
 シスコンスイッチを押してしまう前に退散しようと、私は立ち上がる。
 ふと、視線を感じてシスコンを見ると、額にはこう書かれてあった。
【久々に気楽なお昼休みだったな】
 これって、褒め言葉なんだろうか。

 次の日のお昼も、私とシスコンは二人で屋上にいた。
 理由は簡単だ。
 皐月が風邪で寝込んで学校を休んでいるから。
「それさ、昼休みの前に伝えろよ」
 私が皐月が休んでいることを話すと、シスコンは「なんだよ」と小さく呟く。
 だけど別に特に悔しそうだったり残念がっていたりする様子もない。
 その額には、【あんな美人が一緒だと緊張するしな】という本音が浮かび上がり、続いて【まあ、萌のほうが断然、美少女だけどな】と。
 相変わらずのシスコンっぷりに呆れつつ、私は口を開く。
「あんたが休み時間の間中、ずっと誰かに話しかけられてるから伝えるタイミングがなかったの!」
「俺はまあ人気者だしな」
 シスコンはそう言いながらお弁当を広げ始めたので、私は聞いてみる。
「教室に戻らないの?」
「ここで一人で食べるほうが気楽」
「私はカウントされてないってことね」
 私がお弁当を広げると、ひょいとシスコンが覗いてくる。
「へー。出来も弁当か、ってこれもしや全部、冷凍食品?」
「悪い? 冷凍食品だって美味しいんだから」
「そういう意味じゃなくて、お前、料理できねーのかよって話。しかも冷凍ハンバーグと冷凍コロッケのみかよ」
「お母さんが今、出張だし、冷凍食品もこれだけしかなかったの」
「高校生になったんなら料理くらいしろよ。両親が共働きなら尚更」