なんて考えていると、今度はすごい勢いで腕から抜け出してホームの外へと降りてしまう。名前が気に入らなかったのか、僕の事が嫌いなのだろうか知らないけど、本当なにしに来たんだろう。
まあ、考えても仕方ないか。
猫だし。
「……『真実』と書いてマミ。結構良いと思うだけどなぁ」
ポツリと我ながら好みのネーミングに溜息を吐いて、改札へ向かい作ったばかりのパスモをかざす。
ピッ、と甲高い電子音が鳴り改札はかったるく開いて、僕はそこを抜けていく。
すると、隣の改札にも同じタイミングで人が通り、その人とすれ違いになった。
「?」
ふと、なんとなく振り返ってみたけど知らない背中だった。
知り合いでもなさそうだし、僕は特に気も留めず前を向こうとする。
――さて、昼飯なにを買っていこうかな。
と、さっさと改札を出た瞬間、あるモノが落ちたのが横目に見えた。
白いハンカチ。
今の人のだ。
僕は素早くそれを拾って気付かずホームへ向かう、その人に声を掛けようと、振り返って前のめりに言った。
「あの――」
でも、ホームには誰もいなかった。
今すぐそこにいたと思ったのに、どこへ消えたのだろうか。
「…………これ」
疑問を浮べつつ、僕はそのハンカチに包まれていたモノを手の平に乗せて、誰もいないホームを呆然と見つめていた。
温かな春の風に飛ばされて、それがヒラヒラと舞っていくまでの間。
その――――――――
青色の桜が。
【了】
まあ、考えても仕方ないか。
猫だし。
「……『真実』と書いてマミ。結構良いと思うだけどなぁ」
ポツリと我ながら好みのネーミングに溜息を吐いて、改札へ向かい作ったばかりのパスモをかざす。
ピッ、と甲高い電子音が鳴り改札はかったるく開いて、僕はそこを抜けていく。
すると、隣の改札にも同じタイミングで人が通り、その人とすれ違いになった。
「?」
ふと、なんとなく振り返ってみたけど知らない背中だった。
知り合いでもなさそうだし、僕は特に気も留めず前を向こうとする。
――さて、昼飯なにを買っていこうかな。
と、さっさと改札を出た瞬間、あるモノが落ちたのが横目に見えた。
白いハンカチ。
今の人のだ。
僕は素早くそれを拾って気付かずホームへ向かう、その人に声を掛けようと、振り返って前のめりに言った。
「あの――」
でも、ホームには誰もいなかった。
今すぐそこにいたと思ったのに、どこへ消えたのだろうか。
「…………これ」
疑問を浮べつつ、僕はそのハンカチに包まれていたモノを手の平に乗せて、誰もいないホームを呆然と見つめていた。
温かな春の風に飛ばされて、それがヒラヒラと舞っていくまでの間。
その――――――――
青色の桜が。
【了】
