表紙から数ページめくったところで指が止まってちょっと恥ずかしそうにしている夢前。
 たぶんヘアヌードのページらへんだろう。
「プレイボーイはそこがメインな部分あるしな」
「やー、これわたしが恥ずかしい」
 自分で読み始めたくせに、ポイっとカゴに投げてそっぽを向いてしまう。女子って意外にこういうのは大丈夫そうな気がしたのだが、夢前はそうでもないようだ。
「たかがヘアヌードやんけ」
「お外だよ? 誰かに見られたらどうするの」
「誰もいないからいいじゃん」
「え、また常識置いてきちゃったの? 感覚おかしいって」
 まあ当然、僕ら以外にも人がいるのなら話は別だが、なんたって二人だけだ。今更グラビアを外で見たところで恥ずかしがる事なんてない。
 もっと過激なヤツはさすがに気を使うけど。
「そういうのは見えないとこ置いて」
「反応が良いからもっと困らせたい」
「やー、帰ったら兵悟さんコレクション捨ててやる」
 きっと表紙だけ根をあげるだろうとか思いつつ、僕は自転車にまたがる。
 そうやって嫌われない程度にからかいながら、隠し場所を変えておこうと決めて、ペダルを漕いだ。
 
 2

 僕らの寝床として使ってるショッピングモールのニ階には、家具屋の一部を勝手に改造した簡易自宅がある。
 互いに生活に必要な物をどっかのフロアから持ってきて、暮らせるようにしたのだ。
 なんせショッピングモール。飯も家電も娯楽も全て揃っているし、当然施設類も使い放題。
 調理がしたいならフードコートのキッチンを使えばいいし、風呂ならスポーツパークのを使えばいい、映画もセルフサービスで好きなのを観れる。
 着替えは服屋で選んで、寝るならこの家具屋のベッドを、本なら本屋でいつまでも。
 自分らで扱える物で事足りる。生活になんの不便もない。
 それがここでの暮らし。
 僕たちの日常。
「切りすぎじゃないか? 確かに邪魔ではなくなったけどさ」
「前髪ぱっつんにされたからお返し」
 そう。
 髪を切るのだって自分らで出来てしまう。
 一人じゃ難しい事は二人ですればいい。
 ほら、後ろの髪切るのとか、一人じゃ無理だし。
「良いじゃん。ぱっつん。可愛いじゃん」
「兵悟さんに言われてもなぁ」
「僕の趣味に染まれ」
「じゃあ兵悟さんもわたし好みに」