青春トワイライトと忘れ猫のあくび -Farewell Dear DeadMINE-

 本来の姿に戻ろうとしているからこそ、唯一ちゃんと学校に行ってた中一の記憶も無くなってきてしまったんだ。
 覚えているのは、あとどれ程のあれこれだろう。
 僕だけしか、覚えてなくなってしまうのは、どれくらいだろう。
 開いた卒業アルバムの、中学一年のページを僕はそれ以上めくれない。
 めくりたくない。
「…………ねえ、見せてよ」
 力なく笑う顔に、僕は添えた手を動かせずにいると、ふと、柔らかい感触が手に乗っかる。
羽のように軽く、今にも消えそうな感覚が。
「……わたしも、見てみたい、な。見れなかった景色」
 どこか寂しげだけど、伝わるその言葉の思いに、僕は一緒にページをめくった。
 そこには、廊下で笑い合う同級生の姿や、修学旅行で過ごしたちょっと違った日、部活を楽しげで真剣に取り組む仲間の写真が、ところ狭しと並んでいる。
 僕の写っている写真は、授業中に教科書を読まされているところ。当時はちょうど髪を切ったばかりで、ナチュラルマッシュの髪型をしている。
「……こいつ、学級委員のくせに寝てやがる。あ、あのバカちゃっかり写ってんの……おいおい、この写真使うのかよ。はは、ふざけんてんな、皆」
 見るだけで思い浮かぶ昔、いや実際は少し前の事に、僕は目が潤んできていた。
 戻れない日々を懐かしんでの涙じゃなくて、今こいつとこの写真を見れる事。それがとてつもなく、悲しくて、嬉しくて、なぜだか泣いているんだ。
「僕さ……めちゃくちゃ楽しかったよ…………学校。辞めちゃった陸上部のヤツらとも仲良くしてさ、クラスのヤツらは皆いい奴でさ、先生にも恵まれてたし、本当幸せでさ……母さんも父さんもそんな僕に羨ましいなって言ってくれてさ……だからかな……お前と一緒だったらもっと良かったなあって思っちゃってさ、すげえ欲張りだけど、毎日お前に会い行ったの、そんな気持ちだったからで………………っ」
 中学三年の、最後のページに差し掛かったところで僕は言葉が出なかった。何か言おうとしても、涙が言葉を邪魔をして唇がうまく動かない。伝えたいのに伝えられない。いつも言えない素直な言葉ってヤツを、僕はまた言えなくなっている。情けない。最後までこうなんだ、僕って。