あの日々は楽しかった。振り返れば中学校の日々自体に不満なんてモノなんて無かったのだから。
入部してちょうど一年で行かなくなった陸上部も、二年時に入ったクラシック曲しか流せないあの放送委員も、受験勉強なんて手につかないだろうからって無理に推薦取った三年の夏も、僕は僕なりの理由がその都度あったけど、学校の皆とは楽しくやれていて、先生も先輩も友達にも恵まれていた。
僕が関係作りを頑張ったからじゃないし、特別何かした訳でもない。
皆も大した事なんてしてなくて、慰めも同情も手を差し伸べてくれるような事もしてない。
でも、僕のそばにいてくれる。
ただ一緒にいてくれる。
それがどうしようもなくあたたかくて、充分なくらい。
綺麗ごとを詰め込んだような日々が、僕にとって本当に綺麗で、皆も純粋にそう思ってくれているようで、知らない間にかけがえのない毎日になっていた。
この街の学校での日々と同じように。
――あいつはどうなんだろう。
僕は三階へと登ったすぐそこに立つ。消えそうな光を灯している三年二組の教室。
ドアは開いていたが誰もいない。抜き取られたおうな空っぽの空間だ。
教室に入る。
屋内なのに少し寒い。
そして自然と目に入る、黒板の文字。
『卒業おめでとう! また会おうな! 三年二組』
それ以外にも赤色の大小様々な桜の花びらとクラスの奴らの言葉。
名字を見ただけで顔が分かる奴もいれば、あだ名で呼ばれ過ぎてパッと出てこない奴もいる。
僕はどんな生徒だったのだろうか。
皆にとって、どんな奴だっただろうか。
目に入る、クラスで一番前の僕の机。
未だに荷物が残ってる。卒業証書と卒業アルバム、青い桜の造花。
そして一冊の冊子――。
「卒業文集……ね」
先生から手渡されたのと同じ、僕らの文集。真面目な奴は思い思いの今までと、これからどう生きていくかなんてのが記されていて、そうでもない奴は好き勝手に自作のポエムやら、誰かへのラブレターやら、小説風の自己伝やら、その時に書きたいモノを書かせた、三年二組だけの作品。
僕らの記録。
この学校での伝統。
バカみたいな青春の証を、先生全員に配るところまで含めてが、恒例の。
目に入った端っこに置かれた窓際の席、蛍光灯に照らされた、積み上げられては散らばる何枚もの原稿用紙がある。
入部してちょうど一年で行かなくなった陸上部も、二年時に入ったクラシック曲しか流せないあの放送委員も、受験勉強なんて手につかないだろうからって無理に推薦取った三年の夏も、僕は僕なりの理由がその都度あったけど、学校の皆とは楽しくやれていて、先生も先輩も友達にも恵まれていた。
僕が関係作りを頑張ったからじゃないし、特別何かした訳でもない。
皆も大した事なんてしてなくて、慰めも同情も手を差し伸べてくれるような事もしてない。
でも、僕のそばにいてくれる。
ただ一緒にいてくれる。
それがどうしようもなくあたたかくて、充分なくらい。
綺麗ごとを詰め込んだような日々が、僕にとって本当に綺麗で、皆も純粋にそう思ってくれているようで、知らない間にかけがえのない毎日になっていた。
この街の学校での日々と同じように。
――あいつはどうなんだろう。
僕は三階へと登ったすぐそこに立つ。消えそうな光を灯している三年二組の教室。
ドアは開いていたが誰もいない。抜き取られたおうな空っぽの空間だ。
教室に入る。
屋内なのに少し寒い。
そして自然と目に入る、黒板の文字。
『卒業おめでとう! また会おうな! 三年二組』
それ以外にも赤色の大小様々な桜の花びらとクラスの奴らの言葉。
名字を見ただけで顔が分かる奴もいれば、あだ名で呼ばれ過ぎてパッと出てこない奴もいる。
僕はどんな生徒だったのだろうか。
皆にとって、どんな奴だっただろうか。
目に入る、クラスで一番前の僕の机。
未だに荷物が残ってる。卒業証書と卒業アルバム、青い桜の造花。
そして一冊の冊子――。
「卒業文集……ね」
先生から手渡されたのと同じ、僕らの文集。真面目な奴は思い思いの今までと、これからどう生きていくかなんてのが記されていて、そうでもない奴は好き勝手に自作のポエムやら、誰かへのラブレターやら、小説風の自己伝やら、その時に書きたいモノを書かせた、三年二組だけの作品。
僕らの記録。
この学校での伝統。
バカみたいな青春の証を、先生全員に配るところまで含めてが、恒例の。
目に入った端っこに置かれた窓際の席、蛍光灯に照らされた、積み上げられては散らばる何枚もの原稿用紙がある。
