「大体パターンが決まってるからな。何となくは予想できる」
「へー。さすがでござるなー」
「……なんなのそのキャラ」
 早速横移動ボタンを押してアームを動していく。
 こういうのは取れる流れに気付けば、基本出来るようになっている。一見検討外れのような場所にアームが行っても、流れさえ守ってれば予想だにしない動きをしてちゃんと落ちるのだ。
 その辺は実に考えられている。素晴らしいものだ。
「まずは奥。箱が斜めになったら手前。ここで箱が真っすぐに戻れば後はちょっとずらすだけ」
 ついでなので、横にいる夢前に教えるようにやっていく。
 割と景品が動くから見てるだけでも楽しめるのだろう。ちょくちょく体を動かしながら反応している。
「……よし」
「うまーい、兵悟さんすごー」
「じゃあ、はい」
 景品が良い感じに落ちそうになったところで、僕は夢前に台を譲ってみる。実際に落とした時のあの鳥肌感を、是非とも体験して欲しいと思っていた。
 首を傾げて夢前は言う。
「え、ここで? わたしこれ系ホントに下手なんだよ?」
「大丈夫。これならどこにアームが触れても落ちるから」
「やー、それすら台無しにしちゃうよ」
 そう言いつつもどこか楽しげな夢前は、ボタンを慎重に考えて、ゆっくりと押していく。
 横と縦の軌道が決まり、軽快な効果音と共に落ちていくアームを、二人して前のめりで見守る。
「おお」
 そのままアームが丁度箱の角をつつき、下に押し出されて見事に景品口に落ちる。
 見ている側も思わず歓声を上げてしまう瞬間だ。
 これは嬉しい。
「いえーい」
「な、言った通り落ちただろ?」
「さっすがー、兵悟さんさっすがー」
 屈んで景品を取る夢前に、僕は近くにあった景品用の袋を渡す。
 正直、例の鍵を使えば景品なんか持って帰れるのだが、やっぱりクレーンゲームはやるのが楽しい。 
 景品自体はオマケみたいなモノ。取れたら取れたで満足してしまう。
 取ってきた景品は、案外未開封のままだ。
「お?」
 見やれば、夢前は屈んだまま携帯を構えて何やらこちらを見ていた。どうやら携帯で僕の写真を撮っていたらしい。
 声掛けてくれよ。
「今の顔良かったからさ」
「なんだそれ」
「なんだろうね。分かんない」
「で? どうよ。結構暇つぶしになるだろ」
「うん、いいと思う。落とすのだけだったら」