連れてきたのでも、連れてこられたのでもなく、互いに体育館という行き場所が被った。という理由で。
 なんなんだ、この猫。
「……お前はネコジャラシと遊んでた方がいいか」
 ご不満そうな顔をするマミに、体育館と校舎の通り道で引っこ抜いたネコジャラシを向ける。
 身近なところにも生えているもんだ。駅を探しに行ってなければ、気付かないでスルーしてたであろう植物だもんな。ちょっとした事で見えるモノが変わる。
 しかしマミは無反応。全くもって反応してくれない。
 今は気分じゃないのだろうか。
 仕方なく立ち上がり、体育倉庫を開ける。電気の切れた暗い部屋には体育に必要な用具が所狭しと並んでおり、入る気も引けてくる。
 よく使うのは手前に、そうでないものは奥に、整理するのも面倒でぐちゃぐちゃになっているのだ。
 ああ見えて夢前は見えないとこは大雑把な性格である。
 完全に片づけを任せるタイプの僕と一緒に居れば、ショッピングモールよろしく、中途半端に散らかる状態にもなるのだろう。
 ダメな組み合わせだ。
「っておい、どこ行くんだ」
 扉を開けたと同時。マミがまた早歩きで勝手に行ってしまう。
 バスケットボールの山を避けて、バレーボールのネットを渡り、壁際の柱の前まで勢いよく……。
 僕もストップウォッチの僅かな光で周りを照らし、手探りで奥まで行く。
 それ故一瞬つまずいたが、目の前に壁の感触。何とかマミの近くまで来たらしい。
 体勢を立て直す。すると、変な出っ張りに当たる。ストップウォッチで照らせば、どうやらドアノブ。
 つまり、ドアだった。
「ん、もしかして、柱だと思ってのって、ドアだったのか」
 なんとまあ、今の今まで気づかなかった。暗くてそこまで中に入ったりする事もなかったから、近付いて初めて気づいたレベル。
 手にかけたドアノブを、とりあえず回してみる。
 鍵はかかってなくすんなりと開き、その部屋が眼前に現れる。
「――体育準備室。繋がってたのか」
 体育館の中からは鍵が閉まってて開かない、グラウンドからは窓しか見えない体育準備室。
 意外に広く、天井も高い。
 壁の方を見れば、教員用の大きな机が置いてあって、その上に紙の資料や名簿が乱雑に積み上げられている。
 そして、何と言っても部屋中央に置かれたそれ。
 まだやり掛けであろうその状態は、いつかの僕らを思い出す。