たぶん、調理実習とかは全然関係無くて、単純に食べたいから何か作ろうとしてたんだけど、途中で面倒くさくなっておじゃんしたのだろう。
 しっかしなんだっけか。
 やけに気になる。
 半ば好奇心と共に食品棚を開ける。ずらっと缶詰や調味料が並んでいる。このインスタント味噌汁の束とか、どこから持ってきてんだろう。
「あ、これ」
 見覚えのあるパック、というか物体を見つける。
 タコである。
 茹でてある、調理済みのタコだ。
 他にもパン粉、ロース肉なんかもある。
「どっかで見た事ある食材だな」
 材料を眺めながら調理台に腰掛けようとする。
 すると、パサッ。何か落ちる音がした。
「あ」
 調理台におきっぱなしにされたであろう、料理雑誌が落ちたようだ。
 ちょうど開いていたページには、『美味しく出来るカツ丼の作り方』と、何ページかに渡ってカツ丼の作り方とちょっとした時短テクニックが写真付きで載っていた。
 全然覚えてないが、この状態から考えると、昔ここでカツ丼を作ろうとしていたらしい。
 フードコートで作った時よりも、恐らくずっと前に。
「ミー」
 マミが鳴きながら、再び歩き回り始める。かと思ったらさっさと調理室を出て行きやがった。
 なんて自分勝手なヤツだ。
 僕も見失わないように廊下まで出る。
 何やら校舎内が寒々しい。そういえばマミに気を取られて入ってくる時ドアを閉めてなかった。ひとまず生徒玄関のドアを閉めに向かう事にする。
「ミャ」
 と思ったらマミに先回りされてた。
 お前も寒かったんだな。
 
 ◇

 ストップウォッチを見ると一限が始まる頃だったので、とりあえず僕は体操着を着て体育館にいた。
 いつもなら外で走ったりしてるんだけど、一人になってからというもの、夕焼けのグラウンドは無性に寂しくなるので、最近は体育館で卓球の壁打ちやフリースローをして時間を潰している。
 この前は夢前がいたので、ノリで二人でバドミントンをやったが、いかんせん盛り上がりに欠けた。あいつはそれだけして直ぐに帰っちまったし、僕は僕で消化不良で、お互いなんとも言えない空気になった。
 まあ、そもそもあいつは運動苦手だし、しょうがないっちゃ、そうなんだけど。
「黒いの。フリスビーでもやるか?」
「ムミャ」
 で、今日は今日でここにマミがいる。