ああ、マジでそうらしい。これは頭を抱えるレベル。
 全然覚えてないモノだけに、何を言われるかすごく怖い。
 何書いたんだよ、当時の僕。
「なんですか、ゆめちゃん」
「なんかさあ、昔からわたしの事好きなんだなって思って」
 楽しそうに笑って、改めてこちらを見てくる夢前。
 昔と変わらない、いつもの笑顔だ。
 ――意地の悪い笑顔ってヤツ。
「まさか、お前へのプロポーズでも書いてあったのか」
「ああ、それも可愛いな。でも、もう少しマイルド」
 紙をこちらに見せて、その文字たちを指差す。ところどころ読めるが、やはり僕には象形文字にしか見えないそれ。本当よく読めたなと感心する。
「サンタさんへ。僕はレッドマスクになりたいです。かっこいいからです。あと、ゆめちゃんはお花屋さんになりたいです。叶えてあげて下さい。あまがさきひょうごより」
「……うわ」
 どうやら夢前が読んでたのは、小学生の僕からのサンタさんへの手紙だった。
 完全に内容は将来の願望だったけど、サンタはそこまで出来ないのも分かってないのだろう。
 体全体がそわそわする。主に恥ずかしさで。
「なんかこう」
「はいはい」
「お前の夢を叶えてもらおうとしてる辺り、痛いな」
「えー可愛いじゃん。わざわざ書いてくれてるだなんて、ニヤニヤしちゃうんですけどー」
 言葉だけだったら嬉しそうにも思えるが、やっぱりからかいの顔をしてやがった。
 いやはや、こんな恥ずかしい目に会う為にタイムカプセルを取りに来たんじゃないのに、なんて仕打ちだ。
 即刻撤去を申し出る。
「あっ」
 おもむろに、僕は夢前が持っていた紙を取り上げ、くしゃくしゃにして破り捨てた。
 寂しく、パラパラと白い破片が地面に落ちる。
 別に乗車券の事が何か書いてある訳でもないし、解読に苦労した割に、ただの僕の痛々しい文章だったのだ。思い出として取っておいても、こいつにからかわれるネタなだけ。
 なら、捨てちまってもいいだろう。
「え、ええ? それはちょっとないんじゃないかな?」
 急に不満そうに僕を睨み、語気を強める夢前。
 久しぶりに見る、困惑と怒りの表情。
「こんなこっ恥ずかしいモノを読み上げる奴が悪い」
「はあ? なにそれ、わたしが悪いっての」
 散り散りになったそれらを一瞥して僕に詰め寄る。このまま殴られそうな勢いがある。