けど、ちゃんと見てみると、ハンドメイドの温かみのある出来栄えなのだ。塗装のムラの感じなんか丁寧ではあるんだけど、無機質じゃない。ちゃんと人が塗ったという事が分かる昔ながらの感じ。
 いいよな、こういうのって。
「で、この紙はなんだっけか」
"レッドマスク"のお面を一旦置き、当時大切にしてたであろうミニカーやビー玉のおもちゃと共に入っていた、一枚の紙を手に取る。
 大雑把に折りたたまれたそれを開けてみると、何やらミミズの這ったような字が書いてあった。
 象形文字じゃないのかっていうくらいヘンテコな字だ。
 解読不能である。
「ん?」
 一人でその紙に頭を悩ませていると、何かもう一つ、音も立てずに足元に何か落ちた。
 屈んで拾い上げてみる。
「……これって切符か?」
「見せて見せて…………ん、乗車券?」
 夢前が僕の手元を覗き込んで言う。
 どうやら本当に乗車券のようだ。後ろに小さく書いてある。
 しかし、不思議だ。
 入れたのは、当時の僕らだろう。
 でもこれは判子も押されておらず普通に使える状態で、値段も書いてなければ、行き先なんかも書いてない。本当にただ、乗車券と書いてあるだけなのだ。
 ――忘れているのか、本当に知らないのか。
「バスのかな? でも列車とか電車とか、そっちの方の乗車券っぽいかも」
「列車とか電車ねぇ。遠足にでも行った時のヤツなのかな。未使用で乗ってここに入れたとか」
 小学生の僕ならやりそうな気もするし。
「ねえ、こっちの紙見せて」
 と、乗車券への考察の半ば、夢前が僕の手から紙を取る。
 返事をする間もなく、紙とにらめっこし始める夢前。早々に難しい顔をしている辺り、初見の衝撃が凄かったのだろう。
 ……もしそれ、書いたのが僕だったらちょっとアレだな。
「どれどれ…………うーん、これは『花』かな……で、これは、えと、『サンタさん』か」
 でもなぜか、段々と解読出来てしまう夢前。僕との違いがよくわからん。何か読み方的なものでもあるのだろうか。
 そんなの知りたくはないが。
「……おお、なんか可愛い。ふふ」
 一文字ずつ解析しつつ、感想を漏らしてはチラチラ僕を見てくる。
 この感じだと、本当に僕が書いたヤツか?
 全く記憶にないし、書いたであろう本人が読めない。
「ねー、ひょーごくん」
 わざとらしく平仮名発音で僕を呼んでくる夢前。