幹の間で硬くなったそれを夢前に手を挙げてみせる。意外に重い。持ちながら下りるのも難しそうなので、木をつたらせて地面に落としてやる事にした。
 ガラガラ。と音を立てて、夢前から少し離れたところに到着。
 一応これでも気を使ってやったのである。
「兵悟さんすげー。トレジャーハンターやんけ」
「あんま嬉しくないな、トレジャーハンター」
 一段下の枝に足を下ろし、一気に飛び降りる。ドスン。と足に軽い衝撃が響く。スニーカー越しだけど来るもんは来る。
 ……我ながらスイスイ登れるもんだ。人間の成長とは恐ろしい。
「開けてみっか」
 一息ついて、落とした缶箱を開けてみようとする。両手で手元に収まるほどの大きさだ。意外に指を引っ掛ける場所が小さくやりずらい。
 力を込める。テープで留めてあるんじゃないかってくらい固い。ビクともしない。
 さらに目一杯力を込めてみる。
「おらっ」
 するとようやく隙間が空いた。
 今度はそこに指先を引っ掛けて思いっきり引っ張る。微かに蓋が動き始め、徐々に開いていく。
 そして、数分の格闘の末、何とかこじ開けた。
 ああしんどい。
「……ん、なんか入ってる」
 疲弊している僕を横目に、先に夢前が箱を覗き込む。
 僕もそれに続く。
 どうやら、中にはミニカーとビー玉、折りたたまれた紙切れ一枚と、赤い塗装のお面が入れられているようだった。
 どれも古びているが、強烈な懐かしさがある。
 特に。
「あ、これ、"レッドマスク"のお面だ。おじさんが作ってくれたヤツ、この中にあったんだ」
 そのお面には思い出があった。
 確か、紙芝居おじさんは手先が非常に器用で、紙芝居以外にもこういうグッズを作っては子供たちに渡していたのだ。
 このお面もそうで、僕ら"レッドマスク"好きに作ってくれた物だった。
 でも一個しかなかったから、相談してタイムカプセルに入れた。
 将来、本物の"レッドマスク"なっていた奴が、手に入れるように。
 実にガキくさい。
「でも、よく出来てるね。売り物としてあってもおかしくないよ」
 そんな思い出深いお面を、夢前が触りながら感心する。
 確かにクオリティは高い。まさに商品として売っていてもおかしくないレベルだろう。