まあ、なんでそんな流れになったのかはよく覚えてないけど、タイムカプセルなんてワクワクするワードを聞いたら、やらずにはいられなかったのだろう。
「へー、知らなかった」
「そいつらと僕らだけの秘密だったからな。夢前には言ってなかったんだよ」
「え、なら今言っちゃってよかったの?」
 首を傾げる夢前。僕はベンチに深く腰掛けていた体勢を整えて言う。
「もう皆忘れちまってるだろうし、一人で見つけるのも気が乗らない。でも思い出したら気になって仕方なくてな。一緒に探してくれ」
「ふうん? じゃ、兵悟さんの仰せのままに」
「で、場所だが」
 同時に立ち上がって早速埋めてそうな場所を考える。正直公園ってとこ以外全く覚えてない。
 だからまずは客観的視点で。
 小学生が隠しそうなところ、埋めるのがラクそうなところ。
「ねーねー兵悟さん」
「んー?」
「手で掘るの?」
「……あー、スコップとか有った方がいいか」
 と、スコップの存在を思い出してある事に気付く。
 小学生の僕らはそんな大層なところには埋められない。
 けど、思考的には、他人には見つかりにくい場所にしたい。自分たちしか分からない場所にしたい。そう思うだろう。
 だとしたら、思い出をたどって行けばいい。"レッドマスク"ごっこをしてた彼らが、どこに隠しそうなのかを。
「あ」
一つピーンと来た。ここで大事なのは隠した場所という点だ。
つまり、必ずしも埋めた訳ではない。
という事は……。
「スコップ要らないかもな」
「どういうこと? 埋めてあるんだよね?」
「"レッドマスク"ってのは、"ペテルギウス星"からやって来た正義のヒーローなんだよ」
 地球で悪事を働く"将軍ゴーゴン"を懲らしめる為にやって来た、正義のヒーロー。それが"レッドマスク"だ。
 という事は、天からの使者。
 僕らだけに分かる場所、僕らと"レッドマスク"が一番近い場所。
「たぶん、この木だ」
「そこの根元?」
「と思うだろ?」
 魔王の城、基い、ジャングルジムの奥にそびえる、公園で一番高い木。
 すっかり葉は落ち、枝々を露わにしているその幹の狭間には、何か錆びついた物が見えた。
 僕はそれを指さす。
「見つけられても取りにくい場所って発想だよ。よく思いついたもんだ」
 僕らの考えた隠し場所。それは、見つけてもわざわざ取りには行かないだろう、木の上。