行きたくなかったという訳ではなく、単に行く理由が今までなかっただけで、思い出深いところ。
「その何かを見つけるんだよ」
 キイ、と甲高いブレーキ音が鳴って公園の到着を知らせる。
 自転車を停めながら、見渡してみる。
「ノスタルジックな雰囲気」
 ――この街は本当に僕らの街なんだな。
 当たり前の事でありながら、それを実感して気がつく。
 誰もいないというだけで、街は僕らの記憶にあるものだ。
 間違いなく、昔からの街だ。
「こんなに小さかったっけ? わたし達が大きくなった的な?」
「だろうな。当時は、こんな広さの公園で冒険とか出来たんだけど、今の僕らじゃ、そもそも冒険なんておとぎ話になっちまった」
「言い回しが香ばしいですなぁ」
「臭いって言わない辺りお前らしい」
 目に映る公園内の遊具はどれも古びていて、錆ついている。
 魔王の城に見立てたジャングルジム、鉄棒はその塀で、砂場は底無しの罠。大きなトンネルは村の宿屋だ。
 今でも思い出せる。僕らは確かにここが冒険の地だった。
 むちゃくちゃな設定と、馬鹿馬鹿しい展開の、その時は本気でやってた物語を、皆が皆全力で楽しんでいた思い出の場所。
 何で今は出来なくなってしまったのだろう。
「あのベンチの辺りで紙芝居やってたよな」
 懐かしさを噛みしめながら、大きな木の下に置かれたベンチに向かう。
 どこにでもあるような、古びた木製のベンチ。
 公園にいる奴は皆、ここ囲むようにして集まって紙芝居を聞くのだ。
「僕とお前は基本ここのポジションで、その隣にうるさい奴がいてさ」
 左端のほうを指差して言う。当時のいつもの席で、決まってたその場所を。
「うん、覚えてるよ。お前らラブラブだなーってよく茶化してた子だよね」
「よく覚えてんな」
 名前なんか忘れたけど、いつも一緒にいる僕らは、周りからよくからかわれてた。もちろん、悪い感じじゃなくて、ノリで茶々を入れてる感じだ。
「今も変わってないから、また茶化されちゃうね」
「ラブラブではないけどな」
「なんだとー」
 そうやって背伸びして、僕の肩に肘を乗っけてくる夢前。腕が重い。
「その言い方、あざとい」
「なんやてー」
「そっちの方が良いな」
「よくわからんとなぁ」
 いきなり細い指で、頬をツンツンされる。くすぐったくて、突かれた方向にそのまま顔を向ける。
「なんだよ」