繋がっているように。
「でも、僕は嫌わないでな」
「んー何の話かな? ずっと好きだよ」
6
お互いピアノなんて全然弾けやしないのだけど、時たま触っていたら簡単な曲なら出来るようになった。
エリックサティの"ジムノペディ"パッヘルベルの"カノン"バッハの"メヌエット"……どれも完璧ではないがメロディは追えている。特に夢前は上達が別次元。この前なんか、半分くらいだけどリストの"ラ・カンパネッラ"を弾いてた。あれは聴いているこっちが顔を顰めるようなバカ曲なのに、こいつはちゃっかり弾いてしまう(難し過ぎて弾けてんのか知らんけど)。
料理や散髪もそうだが、実に器用な女なのだ。
つうか、器用過ぎる。
「じゃー、今日は何をやりますかね兵悟さん」
ピアノ椅子に腰掛けて、腕まくりをしながらこちらを見てくる夢前。なんだか、機嫌が良さそうだ。
「あ、連弾でもやろうぜ。超簡単そうな曲で」
「おお、いいよー」
僕は音楽の教科書を広げて、自分でも弾けそうな曲を探す。こいつはどうとでもなるだろうけど、素人同然の僕は好きな曲より難易度の低いものの方が手をつけやすい。特に、連弾なんかの奏者双方の息が合ってないと成り立たないものは、なおそうだろう。
前は無理にショパン作曲の練習曲やって二小節でギブアップしたっけか。あれは選曲が悪かったな。
"革命のエチュード"
全然、練習曲じゃないとだけ言っておく。
特に左手。
「これでいいか」
ショパンの悪夢が蘇ってきたのもあって、一番初めに乗っていた曲、"夕焼け小焼け"のページを開く。
譜面立てに置いたそれを見る為に、夢前が体をこちらにくっ付ける。近い。
「ああ、懐かしいね。それはさすがに初見でいけるでしょ」
「お前は一回見ただけでいけるかもしれんが、僕は無理だ」
音楽の才能の無さは誰にも負けない。
「えー、じゃあ兵悟さん右手やって。さすがにメロディ分かるでしょ」
そう言うと、座ってた位置を交代。
わざわざ立つのも面倒なのか、一旦僕の膝に乗ってから横にずれていく夢前。
スカートが少し寄ってる。
「重い」
「うるせー」
位置が入れ替わったところで、夢前が譜面通りの和音を鳴らし始める。しかも、ちゃっかりアレンジもしてやがる。リズムが譜面よりも細かく、音が増えてる。器用なもんだ。
「伴奏に装飾音符つけ過ぎだろ」
「でも、僕は嫌わないでな」
「んー何の話かな? ずっと好きだよ」
6
お互いピアノなんて全然弾けやしないのだけど、時たま触っていたら簡単な曲なら出来るようになった。
エリックサティの"ジムノペディ"パッヘルベルの"カノン"バッハの"メヌエット"……どれも完璧ではないがメロディは追えている。特に夢前は上達が別次元。この前なんか、半分くらいだけどリストの"ラ・カンパネッラ"を弾いてた。あれは聴いているこっちが顔を顰めるようなバカ曲なのに、こいつはちゃっかり弾いてしまう(難し過ぎて弾けてんのか知らんけど)。
料理や散髪もそうだが、実に器用な女なのだ。
つうか、器用過ぎる。
「じゃー、今日は何をやりますかね兵悟さん」
ピアノ椅子に腰掛けて、腕まくりをしながらこちらを見てくる夢前。なんだか、機嫌が良さそうだ。
「あ、連弾でもやろうぜ。超簡単そうな曲で」
「おお、いいよー」
僕は音楽の教科書を広げて、自分でも弾けそうな曲を探す。こいつはどうとでもなるだろうけど、素人同然の僕は好きな曲より難易度の低いものの方が手をつけやすい。特に、連弾なんかの奏者双方の息が合ってないと成り立たないものは、なおそうだろう。
前は無理にショパン作曲の練習曲やって二小節でギブアップしたっけか。あれは選曲が悪かったな。
"革命のエチュード"
全然、練習曲じゃないとだけ言っておく。
特に左手。
「これでいいか」
ショパンの悪夢が蘇ってきたのもあって、一番初めに乗っていた曲、"夕焼け小焼け"のページを開く。
譜面立てに置いたそれを見る為に、夢前が体をこちらにくっ付ける。近い。
「ああ、懐かしいね。それはさすがに初見でいけるでしょ」
「お前は一回見ただけでいけるかもしれんが、僕は無理だ」
音楽の才能の無さは誰にも負けない。
「えー、じゃあ兵悟さん右手やって。さすがにメロディ分かるでしょ」
そう言うと、座ってた位置を交代。
わざわざ立つのも面倒なのか、一旦僕の膝に乗ってから横にずれていく夢前。
スカートが少し寄ってる。
「重い」
「うるせー」
位置が入れ替わったところで、夢前が譜面通りの和音を鳴らし始める。しかも、ちゃっかりアレンジもしてやがる。リズムが譜面よりも細かく、音が増えてる。器用なもんだ。
「伴奏に装飾音符つけ過ぎだろ」