続けてブレザーとセーターとブラウスと、僕の前で平然と脱いでいく。
いつも思うけど、下に着ているからと言って、その平然さは女としてどうなのだろう。
「兵悟さんはわたしに何を求めてるのさ」
呆れ半分の瞳。別に変な目で見てる訳ではないのに何故だろう、この感じ。
怒られてるみたいだ。
僕も制服を脱いでいく。同じく下に着ているので、着替えが直ぐに終わる。
互いに体操着姿になった僕ら。こいつのは寝巻で見慣れているからか、部屋着みたいな印象。対する僕は、焼けてないサッカー部っていったところか。
……いや、サッカー部じゃないけど。
二人でチャイムの音と共に校庭へ向かい、軽く準備体操をする。
誰もいないグラウンド、誰もいない校舎、どこまでも続く夕暮れ、十六時三十一分で止まった時計……。日常のそれらを視界に入れながら、ラジオ体操でもしているかのように、無意識に覚えた順番の屈伸運動やストレッチをしていく。
丁度、目の前の体育準備室を見上げてみる。
体育館に繋がっているそこはなぜか鍵が掛かっていて入った事はない。入る必要もないのだが、そういう行けない場所を見かけると、人は気になってしまう。あそこはどうやったら入れるのだろう。漠然とそんな事を見る度に思う。
「にしても、ぱっつんは夕焼けに映えるな」
 隣に歩いてきた夢前は、夕焼けの逆光でちょっと色気があるように見える。
 丸顔でその前髪だったら、普通は幼さを感じるところなのだろうけど、光加減は随分印象が変わるものなのだ。
 いつもより大人っぽいのだ。
「え、映えるとかあるの?」
「なんかこう、いい感じなんだよ」
不意に目を逸らしてしまう。改まるのは幾分、苦手な性分。
つって。
「あー、いつもの褒めるの下手な兵悟さんシリーズかー。うんうん、ありがとうね」
 そして、僕の頬っぺたを人差し指で突きながら笑い掛けてくる夢前。
 自然と体も近い位置になって、ほのかな甘い香りが鼻をつく。
 おいやめろ、恥ずかしいだろうが。
「ねえ、なんでいつも素直じゃないの?」
「変なからかい方すんな。勘違いされるわ」
「誰にかな? わたしに?」
 調子に乗ってさらに身を乗り出して訊いて来やがる。ムカつくからデコピン一発。痛くない程度の可愛いヤツを。
「やー、暴力シリーズ禁止」
「全然暴力じゃないだろ。スキンシップ」