互いにこうしておもちゃになるのはお決まりで、怒られない程度にやり合っていく。
変な髪型になったら自分に跳ね返って、要望を無視すれば自分も無視される。
だから、ちょうど良い。一人で見る鏡より二人で見る鏡の方が、面白い。
僕好みになった夢前は、その僕を自分好みにするように――
「お、いい感じ」
夢前の様子を窺うに、どうやら仕上げに襟足を整え終わったようだった。
二人で鏡に写る僕を確認する。そこには、思ったよりも普通で、無難なヘアーになった僕がいる。
実に学生らしい髪型だ。
「ふふん、ナチュラルマッシュ。パーマとかいらない自然なマッシュヘアでスタイリングも楽々。どうすっかお客さん」
どや顔がうざい。うさぎのくせに。
「お前こういうのが好きなのか」
「あれ、感想は」
「お前こういうのが好きなのか」
「ねえ、感想」
「お前こういうのが好きなのか」
「感想……」
何秒間か夢前の目を見つめてみる。
「……ぶっちゃけ好きです」
そしたら小声でふてくされたような顔をされた。言わされたのがそんなに恥ずかしかったか。
しかし、僕がこいつの髪を切ってやったのと同じくらいな雰囲気を突いてくるあたり、お互い性格を知り合ってる。
前回なんか二人して刈り上げを入れる羽目になった。
あの時はこいつが先行で、僕は冴えないサッカー部、こいつは代官山のしゃれた新人美容師という組み合わせになった。
いや、なんで僕は冴えなくて、お前は似合うのか。
「で、まあ、さすがにマッシュは前髪流した方がいいからね。ぱっつんは勘弁してあげたよ」
「さすが代官山」
夢前の手が僕の髪を撫でる。微妙にくすぐったい。
ケープを脱ぎ捨て、散髪タイムが終わる。僕らはふうっと、一息吐いてから立ち上り、散らばった髪の毛をほうきで纏め始める。
薄い茶色と、濃い黒色。
短い髪と、少し長い髪。
集められるそれら僕らの髪で、この街で過ごした時間の長さを示す。
どのくらいの期間なのだろうか、あまり考えてない。ただ、確かにここでその時間を過ごしたという事だけがある。
一体何日この街にいるのだろう。あまり覚えていない。
「結構切ったな」
集め終わった髪の束を見る。当たり前のように黒色の方が多い。まあ、夢前は全体をすいて、前髪切ってやっただけだしな。殆ど前と変わってないのが現状だろう。
変な髪型になったら自分に跳ね返って、要望を無視すれば自分も無視される。
だから、ちょうど良い。一人で見る鏡より二人で見る鏡の方が、面白い。
僕好みになった夢前は、その僕を自分好みにするように――
「お、いい感じ」
夢前の様子を窺うに、どうやら仕上げに襟足を整え終わったようだった。
二人で鏡に写る僕を確認する。そこには、思ったよりも普通で、無難なヘアーになった僕がいる。
実に学生らしい髪型だ。
「ふふん、ナチュラルマッシュ。パーマとかいらない自然なマッシュヘアでスタイリングも楽々。どうすっかお客さん」
どや顔がうざい。うさぎのくせに。
「お前こういうのが好きなのか」
「あれ、感想は」
「お前こういうのが好きなのか」
「ねえ、感想」
「お前こういうのが好きなのか」
「感想……」
何秒間か夢前の目を見つめてみる。
「……ぶっちゃけ好きです」
そしたら小声でふてくされたような顔をされた。言わされたのがそんなに恥ずかしかったか。
しかし、僕がこいつの髪を切ってやったのと同じくらいな雰囲気を突いてくるあたり、お互い性格を知り合ってる。
前回なんか二人して刈り上げを入れる羽目になった。
あの時はこいつが先行で、僕は冴えないサッカー部、こいつは代官山のしゃれた新人美容師という組み合わせになった。
いや、なんで僕は冴えなくて、お前は似合うのか。
「で、まあ、さすがにマッシュは前髪流した方がいいからね。ぱっつんは勘弁してあげたよ」
「さすが代官山」
夢前の手が僕の髪を撫でる。微妙にくすぐったい。
ケープを脱ぎ捨て、散髪タイムが終わる。僕らはふうっと、一息吐いてから立ち上り、散らばった髪の毛をほうきで纏め始める。
薄い茶色と、濃い黒色。
短い髪と、少し長い髪。
集められるそれら僕らの髪で、この街で過ごした時間の長さを示す。
どのくらいの期間なのだろうか、あまり考えてない。ただ、確かにここでその時間を過ごしたという事だけがある。
一体何日この街にいるのだろう。あまり覚えていない。
「結構切ったな」
集め終わった髪の束を見る。当たり前のように黒色の方が多い。まあ、夢前は全体をすいて、前髪切ってやっただけだしな。殆ど前と変わってないのが現状だろう。