今年は雪が多くて、スキー場の営業が絶好調らしい。久しぶりに実家に電話してみると、親戚経由のそんな情報が飛び込んできた。実際、新潟市でも例年以上に降っていて、電車やバスはしょっちゅう遅延や運休を繰り返している。
 幸か不幸か、そのせいで日下部くんと一緒に通勤することが増えた。車に乗せてもらえるのは便利だし嬉しいのだけど、毎度毎度一緒に出勤してタイミングが重なると、周りから勘繰られてしまいそうで面倒だ。
 けれど、電車がないと交通手段がなくなってしまう以上、そこは頼るしかない。去年まではかというのはやはり大きい。
「水澤さんも車買ったらどうですか」
 ごもっともな意見なのだけれど、結局いつも悩んで終わってしまう。
「毎年考えるのよ。でも今、マンションの駐車場は満車でしょ? 駐車場借りるのにもお金がかかるし、正直あんまり運転好きじゃないし、冬の一時期だけならいいや、ってなっちゃうんだよね」
「まあ、気持ちはわかりますけど。車って維持費けっこうかかるし、運転が好きじゃないと面倒なものではありますよね」
 それに車を買ったら、もう日下部くんにこうして乗せてもらう機会もなくなっちゃうし――という心の中の本音はそっとしまう。天気に恵まれずに夜の月となかなか会えないままなので、こうして話す時間が増えていることが嬉しい。
 会社に着いてからは、他の人たちに見られないようにタイミングを見計らって、日下部くんと時間をずらしてオフィスに入るようにしている。だから、その様子を誰かに見られているなんて予想もしていなかった。
 その日の帰り、駅に隣接している本屋で本間くんとばったり遭遇してしまった。いつかのデジャヴを感じながら、前と同じように気づかないふりをする。こちらからプライベートで話しかけるのはまだ気まずかった。
 そして案の定、本間くんは私に気づいてくれてしまうのだ。
「久しぶり。元気?」
「……久しぶり」
 目を見て話せない。彼の様子は以前と変わらないけれど、告白を断って以来、私は業務以外で話しかけることをしていない。彼が平然と話しかけてくることが不思議で仕方なかった。
「ねえ、ずっと気になってたことがあるんだけどさ」
「気になってること? 何?」
 嫌な予感を感じながら聞き返すと、彼は周りに人がいないのを確認して小声で訊ねてきた。