週末はどんよりとした曇り空が朝から広がっていた。迷った挙句に普段会社に着ていくのとは違う、お出かけ用のコートを羽織ってエントランスに降りると、いつものように日下部くんは先に待っていた。
「おはようございます」
「おはよう」
 行きましょうか、と、彼はあっさりと外に出た。車に乗り込み、バイパスを通って市街まで抜ける。橋を越えた先に、朱色の鳥居が見えてきた。駐車場に車を停めて境内に入ると、もう松の内も明けてしまったせいか人はまばらだった。
 鈴を鳴らしてお賽銭を入れ、二例二拍手。毎年いい願い事が思い浮かばなくてざっくりとしたことしか言わないけれど、今年はきちんと考えてきた。
 仕事で成果を出せますように。
 勉強している資格試験にちゃんと合格できますように。
 そして、――もっと素直に、自分と向き合えますように。
 お願いするだけでは意味がないのは重々承知している。自分で動かなければ何の意味もないのだ。
 後悔しないように、どんな未来になっても自分が納得できるように。私はまず、自分の心ときちんと向き合うことから始めないといけない。
 ゆっくり目を開けて一礼すると、隣の日下部くんも同じタイミングで最後の礼をしていた。
「おみくじ、引こうよ」
「そうですね」
 初穂料を納めておみくじを開くと、吉と出た。
 ――行動すれば、良いほうへ動く。そんなようなことが書いてあった。仕事や日常生活のことも、悪くない。
 大丈夫。きっと、今年はうまくいくはずだ。ちゃんと動けるならば。
「どうでしたか?」
 ふいに、日下部くんが私の手元をのぞき込んできた。その距離の近さに心臓がリズムを狂わせる。
「き、吉だったよ。日下部くんは?」
「大吉でした。今年は良い一年になりそうです」
 そう言って、彼は自分が引いたおみくじを見せびらかしてきた。お互い大事におみくじをたたんで、鞄にしまう。鳥居をくぐって一礼し、私たちは神社を後にした。
「このあとどうしますか? まだ昼なので、どこかでお昼ご飯を食べるとして」
「せっかくこっちまで来たんだから、このまま帰るのもちょっともったいないよね」
 話しつつ、古町まで歩きながらランチの店を探す。花街として栄えたこのあたりは、碁盤の目状に交差する小路のあちこちにレトロな商店やお洒落なカフェがひしめいている。一軒のカフェに入り、ランチセットを頼んで一息ついた。