二週間ほど前に初雪が降ってから、どんどん冷え込みがきつくなってきている。あっという間に十二月がやってきて、もう今年も二十日ばかりで終わってしまう。
 雪がちらちらと降りだした中で、私は同期女子たちと忘年会に来ていた。女子四人で乾杯をすると、話はすぐにある話題になった。
「椿、結婚おめでとう!」
「ありがとう!」
 夏の同期会で結婚宣言をした椿が昨日、ついに入籍をしたのだ。真っ先に祝いの言葉を発したのは皐月だったけれど、そんな彼女も先月末に籍を入れたばかりだ。
「皐月もおめでとう。こんな短期間に二人も結婚するとは思わなかったな」
 もう一人の同期である桜は、学生時時代からの彼氏と七年近く続いているという。何も言わないけれど、ずっと仲良しだという話だし、きっと彼女の結婚報告も秒読みだろう。
「桃子の話は最近聞かないけど、どうなのよ。なーんにもないの?」
「ないよー。なーんにもありません」
 そう言って笑ってみせた瞬間に、小熊さんの顔が脳裏をよぎった。秋にうちを退職して東京に引っ越してからはまったく音沙汰がないけれど、引っ越したと同時に結婚したと聞いた。今頃幸せに暮らしているはずだ。
 私のことなんて忘れて。
 私だって、今の今までほとんど忘れていた。別に思い出したからって胸が痛むとかそんなことは一切ない。だから、この同期たちにも何も話したことはない。もうとっくに過去の話だ。
 だから、幸せそうな新婚の二人と、穏やかに愛を育てている桜が純粋にうらやましい。そろそろいい加減、私だって彼氏がほしいなあ、と呟くと、合コンとか行けば? と椿が茶化してきた。
「営業部の佐藤さんとか、たまに街コンとかも行ってるらしいし。ものは試しで一回行ったらいいじゃない」
「合コンなんて学生以来行ってないなあ……初対面の人と話すのって苦手だし」
「じゃあ社内で誰か見つけてみる? 同期だったら今フリーなのは本間くん?」
「いいじゃん。将来の有望株でしょ。本社に持ってかれるかもって噂もあるくらいだし」
「あー……本間くんは……」
 歯切れ悪く反応すると、三人が一気にこちらを見つめてくる。明らかに何かあったような言い方をしてしまったことを悔やみつつ、青リンゴサワーを一口飲んだ。
「秋ごろにちょっといろいろあったの。だからノーコメントで」
「ねえ、そんな話し方で納得すると思う? あいつは特に何も変わった感じ無かったけど、何があったのよ」