*
その週末は町の夏祭りだった。高校の同級生と待ち合わせて駅前広場に行くと、例年通り人でごった返している。屋台でお好み焼きを買って、つつきながら広場の隅に場所をとった。もうすぐ花火が上がるのだ。
「あれ、水澤?」
唐突に人ごみの中から名前を呼ばれて振り返ると、会社の同期の本間くんがいた。その後ろには同世代の男性数人が顔をのぞかせている。
「本間くん。地元こっちだったっけ?」
「いや、俺は上越なんだけど、従兄がこっちでさ。遊びに来てるんだ」
「そうなんだ。こんなところで会うなんてびっくりした」
後ろにいたのは従兄さんとそのご友人とのことで、私も同級生を紹介しながら挨拶をした。そのまま一緒に花火を見る流れになる。
「毎年この時期は帰省してるけど、会ったの初めてだよね」
「うん、夏に湯沢に来るのは就職してから初めてなんだよね。今までは従兄の都合がつかなくて、遊びに来るタイミングがなくてさ」
ドォン、と、腹の底に花火の音が響く。アナウンスとともに、花火が次々と打ちあがる。本間くんの横顔に、その光がきらきらと散った。
「あのさ、今度、飯でも行かない? 同期なのになかなか会わないけど、たまには」
「いいね。あ、それなら、同期会しようか」
次々に上がる花火は鮮やかで、色や形も様々だけどどれも美しい。そういえば、就職した年には同期のみんなで新潟市の花火大会を見に行ったなと思い出す。本間くんにその話をすると、懐かしいね、とくしゃっと笑った。
「そのあと所属がばらけちゃったから、あれがみんなで集まった最後になっちゃったもんね。うん、同期会やろう、今月中に」
「そうだね。女子には声かけとくから、男子のほうは頼むね」
了解、と、本間くんはおどけて返事をした。友人たちはそれぞれ仲良くなって、みんなで花火を見上げたり写真を撮ったりしていた。物おじしない同級生をうらやましく思いながら、私も携帯を取り出して花火を数枚写真に収めた。
「水澤」
「ん?」
振り向いた瞬間、カメラのシャッター音が鳴った。携帯に顔を半分隠しながら、本間くんがにっこり笑った。
「振り向き美人。いい写真が撮れたよ」
「ちょっと、勝手に……!」
文句を言ったけれど、見せてもらった写真は花火をバックに振り向く私が、かなり綺麗に撮れていた。まるでアイドルのグラビアのようだ。
「カメラの機能でこういうのが撮れるんだよ。後で送っとくね」
「ありがと。せっかくだからSNSのプロフィールにでも使うわ」
やがて、花火の打ち上げが終わると、一気に人の数が減っていく。ざわついた空気があっというまに静かになった。本間くんや同級生とも解散し、私は一人で帰路についた。ふと、携帯のバイブレーションを感じて画面をつけると、本間くんから写真が送られてきていた。
〈今日はありがとう! 同期会、女子側の幹事よろしくな〉
お礼と了解の文字を送って、もらった写真をさっそくプロフィールに設定する。自分のアカウントじゃないような感じがするけれど、夏らしい思い出ができて気分が高揚する。そのまま私は、同期の女子に連絡を取り始めた。
その週末は町の夏祭りだった。高校の同級生と待ち合わせて駅前広場に行くと、例年通り人でごった返している。屋台でお好み焼きを買って、つつきながら広場の隅に場所をとった。もうすぐ花火が上がるのだ。
「あれ、水澤?」
唐突に人ごみの中から名前を呼ばれて振り返ると、会社の同期の本間くんがいた。その後ろには同世代の男性数人が顔をのぞかせている。
「本間くん。地元こっちだったっけ?」
「いや、俺は上越なんだけど、従兄がこっちでさ。遊びに来てるんだ」
「そうなんだ。こんなところで会うなんてびっくりした」
後ろにいたのは従兄さんとそのご友人とのことで、私も同級生を紹介しながら挨拶をした。そのまま一緒に花火を見る流れになる。
「毎年この時期は帰省してるけど、会ったの初めてだよね」
「うん、夏に湯沢に来るのは就職してから初めてなんだよね。今までは従兄の都合がつかなくて、遊びに来るタイミングがなくてさ」
ドォン、と、腹の底に花火の音が響く。アナウンスとともに、花火が次々と打ちあがる。本間くんの横顔に、その光がきらきらと散った。
「あのさ、今度、飯でも行かない? 同期なのになかなか会わないけど、たまには」
「いいね。あ、それなら、同期会しようか」
次々に上がる花火は鮮やかで、色や形も様々だけどどれも美しい。そういえば、就職した年には同期のみんなで新潟市の花火大会を見に行ったなと思い出す。本間くんにその話をすると、懐かしいね、とくしゃっと笑った。
「そのあと所属がばらけちゃったから、あれがみんなで集まった最後になっちゃったもんね。うん、同期会やろう、今月中に」
「そうだね。女子には声かけとくから、男子のほうは頼むね」
了解、と、本間くんはおどけて返事をした。友人たちはそれぞれ仲良くなって、みんなで花火を見上げたり写真を撮ったりしていた。物おじしない同級生をうらやましく思いながら、私も携帯を取り出して花火を数枚写真に収めた。
「水澤」
「ん?」
振り向いた瞬間、カメラのシャッター音が鳴った。携帯に顔を半分隠しながら、本間くんがにっこり笑った。
「振り向き美人。いい写真が撮れたよ」
「ちょっと、勝手に……!」
文句を言ったけれど、見せてもらった写真は花火をバックに振り向く私が、かなり綺麗に撮れていた。まるでアイドルのグラビアのようだ。
「カメラの機能でこういうのが撮れるんだよ。後で送っとくね」
「ありがと。せっかくだからSNSのプロフィールにでも使うわ」
やがて、花火の打ち上げが終わると、一気に人の数が減っていく。ざわついた空気があっというまに静かになった。本間くんや同級生とも解散し、私は一人で帰路についた。ふと、携帯のバイブレーションを感じて画面をつけると、本間くんから写真が送られてきていた。
〈今日はありがとう! 同期会、女子側の幹事よろしくな〉
お礼と了解の文字を送って、もらった写真をさっそくプロフィールに設定する。自分のアカウントじゃないような感じがするけれど、夏らしい思い出ができて気分が高揚する。そのまま私は、同期の女子に連絡を取り始めた。