そうして全部排水溝に流して迎えた朝は、やっぱり最悪のコンディションだった。なかなか寝付けなくて顔色も酷いし、化粧ものらない。昨晩、三人で食べに行くと決めていたカフェのモーニングのための集合時間が迫って、私は諦めて部屋を出た。気分も全く乗らないけれど、ここで行かないなんて言えるほど、私のプライドは融通がきくわけではない。
「おはようございます」
 案の定、二人はもう先に来ていた。ちゃんと笑えているか不安になりながら挨拶をすると、まるで昨日のことなんてなかったかのように返事が返ってくる。その声だけ聞いて、私は二人の後ろについて黙って歩いた。
 小熊さんは今、何を考えているんだろう。
 日下部くんは気づいているだろうか。
 もう泣くほど涙は残っていないけれど、どんなに面白いお笑い芸人を見ても笑えない自信はある。顔の筋肉は仕事の仕方を忘れたようだ。
「着きましたよ、水澤さん」
 日下部くんの呼びかけで我に返る。お店は予想通り、レトロでお洒落な空間だったけれど、席に着いてから話した内容も、モーニングの味も覚えていない。
「水澤さん、今日テンション低くないですか」
「ほっといてよ」
 小熊さんが席を外した瞬間、予想通りに日下部くんは突っ込んできた。反射で飛び出した言葉が思ったよりも強くなって、私は慌てて誤った。
「ごめん。……でも、今は触れないで。この後、講習会もあるし」
「わかりました。じゃあ今週末、天気が良かったら夜十時に公園集合で」
「え……うん」
 思いがけない返答に戸惑って、考えるより先に頷いていた。満足げな彼の表情が視界の端に一瞬見えたけれど、戻ってきた小熊さんの声にまたかき乱された。
「お待たせ。じゃあ、行こうか」
「はい」
 個別に会計をして、店を出る。その日は結局、帰りの新幹線を降りるまで、小熊さんの顔をまともに見ることができなかった。