「お久しぶりですわね。イザベラ様、社交界にはお出ましにならないのだと伺っていましたが」
「……この度、兄の代わりを務めることになりましたので」

 イザベラは表情も変えずに答えた。

「そちらは? 何度かお見掛けしたことがありますが、今のお名前は何というのかしら?」

 仕掛けるようないやらしい顔で尋ねてくるメギツネに対して、イザベラはきょとんと瞬きをした。
 嫌味がわかっていないのだ。

「ジャンですわ」
「社交界では有名な方でしてよ。愛の悪魔なんて呼ばれていましたが、……実際はどうなの? 離れられないほどお上手?」

 メギツネが下卑た顔で笑う。

「私より詳しいのですね」

 イザベラは裏もなくニッコリと笑い返した。
 メギツネは、憎々し気にオレを睨みつけてドレスを翻した。