「聖女になると言ったのは、やっぱり負け犬の遠吠えでしたか。素直になれば、僕が娶ってあげても良かったんですよ」
俯き震えるイザベラの肩を抱いて、オレはマルチェロに向き合った。
「これはこれは、社交界で有名な貴公子様ではありませんか。こんなところで牙をむくとはなかなかに無様ですね。美しい我が主人を見て欲しくなったならそう言えばいい」
「なかなかの口をきくじゃないか。『アルベルト』」
マルチェロはワザとオレを昔の名前で呼んだ。忌々しい。
「首輪がないからといって、身分が変わったわけじゃないんだぞ? 図に乗るな! イザベラのしつけが悪いなら僕が教えてやろう」
腰の剣に手をかける。