オレは乱暴に上着を脱ぐと、ベッドに投げつけた。
イザベラの部屋に行こう。そうして今すぐにでも片をつけて、明日には自由の身だ。
ツカツカと石造りの廊下を小走りにイザベラの部屋へ向かう。
ドアの前で息を整え、営業スマイルを張り付けた。場数は踏んでる。わかってる。女がどんな言葉を望むか、どんな男を欲しがるか。
例えば、初恋の人。例えば、失った夫、結ばれない憧れの人。
だから、オレはそれを演じる。そいつらに言って欲しかった言葉を吐く。誰も、オレなんか欲しがってない。
上品にドアをノックした。固い声が、入りなさいと命じる。
オレはドアの内側に滑り込んだ。