第11話 好きだから守りたい

 もう部活の時間は終わる。

 オレは真面目に絵本の作者とかノートに書き込んだりした。

 その絵本がなにで画材とか書かれているのか調べたくなった。



 今日は和正に一緒に帰ろうっていわれてたが、約束の時間までまだ30分はあった。



「じゃあ、私は先に帰るね。部室の鍵タヌキ(先生)に返しといて」

 タヌキは絵本研究部の顧問になっていた。

 前任の顧問の先生は出産のため産休に入るから、タヌキがバトンタッチされた。

 顧問だったポスター研究部が潰れてしまったし、担任もやっていないタヌキ(先生)が適任だったのだろう。



「はい、分かりました。じゃあ、部長さようなら」

「じゃあな〜」

 相楽部長は右手は振りながら、左手でガラガラッと勢いよくドアを開けて帰って行った。



 シーンとした。



 相楽部長が帰ってしまうと、とても静かだった。



 部室にオレは一人。



 5分ぐらい経つと外が騒がしくなった。

「なんだ?」

 オレは部室のドアを開けると信じられない光景が目にとびこんできた。




「やめろよ!」

 それを見てオレは叫びながら走った。

 オレはダメダメな人間だ。

 だが。

 許せないものは許せない。

 考えるより体が動いてしまった。

 

 廊下に大好きな詩音さんがいたんだ。

 詩音さんが嫌がっているのに無理やり手を引っ張る男子生徒を見かけて、オレは走って!



 二人を離そうとした。



 いきなり顔面を殴られた。

 目の前に火花が散る。

 チカチカと光が飛んでいる。



 オレもそいつの顔を殴った。



 ボコボコに殴り返された。

 だけどオレは負けなかった。

 夢中で抵抗して転がされて馬乗りになって殴られたが何度も蹴り返した。

 考えるより先に手が足が出てしまった。



 詩音さんが嫌がるようなことをするやつは許せない。



 オレはそいつの名札を引きちぎってやった。落ちてきた生徒手帳も証拠に握って言ってやった。

「許さねえからな!」

 名札を見ると二年生の隣りのクラスのやつだった。

「やめてっ!!」

 詩音さんが叫んで止めようとしたがオレはそいつとの喧嘩をやめられなかった。



 そこに約束の時間よりも早くアイツが来た。

「健人っ!?」

 タイミングよく和正が来て俺たちをひきはがす。

「何やってんだよ村井! 試合出れなくなるぞ」

 村井は和正と同じサッカー部らしかった。

 村井は駆け出して逃げて行った。

「大丈夫っ?! 健人くん!」

 詩音さんは泣いている。

「大丈夫か? 健人」

「……ああ」



 いってえ。

 あちこち痛えよ。

 顔から血が出てる。



「保健室行こう」

「良いです。大丈夫です」

 格好悪いオレ。

 もっとスマートに詩音さんを助け出せたら良かったのに。

 

 だけど後悔してなかった。

 しばらくして騒動を聞きつけたタヌキ(先生)にこっぴどく叱られても。