「香月くん!お待たせ。」
昇降口で暇そうにスマホを眺めていた香月くんに声をかけた。
テスト前だから、今週は部活もなし。
あいにく勉強する時間はたっぷりある。
「どこ行く?ファミレス?」
「うーん…」
学校の図書館はテスト前でいっぱいだろうし…
そもそも香月くんと二人で勉強してるの見られたら、東郷さんだけでなく女子たちから非難の視線を受けるのは目に見えてる。
近くのファミレスを探そうとスマホを見ると、
天気予報が通知で来ていた。
「あ、このあと雨…」
「傘ねぇの?」
折り畳み傘はあるけど…
今朝の夢は雨だった。
バスに乗る可能性がある距離は避けないと…
「…傘ない。
だから、えっと…香月くん家はどう!?」
「え…」
香月くんは怪訝な表情を浮かべた。
さすがに図々しすぎただろうか。
「私の家、お母さんいるし…
私の家寄って、傘持って香月くん家でやるのが効率いいかと思ったんだけど…
あ、おうちに家族いるの?」
「いないけど…」
「じゃあ決まりね。」
私がにっこり笑うと、香月くんはいぶかしげに私を見て、「わかった」と呟いた。
なんか怪しまれてる…?
いや、今回はうまくごまかせたはず!
最初の予知夢のときや東郷さんのときのように
バレるわけにはいかない。
「雨降る前に早く行こう。」
「俺は傘持ってるから、濡れるのお前だけな。」
「え!入れてくれないの!?」
「俺の傘めっちゃちっさいから。」
完全なる意地悪だ。
私はふんっとそっぽを向いた。
そういえば…香月くんの家で二人きりって
よっちゃんの恋の進展という期待に応えられるのでは!?
私は思い出したように高鳴りだした心臓の音を
曇り空を眺めながら感じ取っていた。