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よし、今度こそ部の役に立って見せる。
私は気合いを入れてトングをカチリと鳴らす。
みんなに美味しいお肉を届ける!
自分なりに素早くお肉と野菜を並べているつもりだけど、なかなか火が通らない。
火力が弱いのかな…
うちわで火をあおぐと、炭が空中に舞い、咳き込んだ。
「ケホッ…ケホッ」
二つあるグリルのうち、もうひとつは東郷さんが番をしている。
そっちは先輩に囲まれ、大盛況だった。
順番を待つ一年生はひそかに私のグリルで肉が焼き上がるのを楽しみにしているようだ。
「ケホッ…」
あ、お肉!
思い出して少し炭を被ったお肉をひっくり返すと、かなり黒くなっていた。
なんで…私ってこう間抜けなんだろ…。
みんなに申し訳ない。
情けない。
「まずそ。」
そう言うと、焦げたお肉をひょいと箸で持ち上げ、口に含んだ。
どうして…
いつも困ってるときそばにいてくれるんだろう…
「香月くん…」
「やっぱまず」
香月くんはゴクンとお肉を飲み込むと、
べっと舌を出した。
「ご、ごめんね。
それ炭被って…しかも焦げて…」
「炭被ってんのはお前もだろ。」
「え!」
私は髪や肩をぱっぱと払った。
「俺がやるよ。」
「え、いい!これはマネージャーの仕事で…
あ!と、東郷さんの方手伝って上げてよ!」
私が下手くそに笑って見せると、
香月くんは口をへの字に曲げ私からトングを奪い取った。
「東郷は一人でできる。
麻は無理。オッケー?」
「えっ、そ、そうなんだけど…
香月くんは…ほら疲れてるから。
高崎くんに…」
「『高崎くんに手伝ってもらう』って?」
「え…うん…。」
「いつそんなに仲良くなったんだよ…」
「えっ…?」
「うるさい。とっとと肉持ってこい。
そのあとうちわで細かく火あおげ。」
「は、はい!!」
私は仕方なく香月くんの命令に従った。