「東郷さんっ、高崎くん
お待たせ!」

「七瀬さ~ん」
「え、香月くん!?来てくれたんだ。」


東郷さんが香月くんを連れてこいって言ってたのに…。

来たことに驚く演技は女優並みに自然だ。


東郷さんに笑顔を向けられ、
私は慌てて目をそらした。


「あれ、麻ちゃん。大連くんは?」

「あ、えっと!大連くんは昼御飯を調達してて…」

「昼ごはん?」

「まぁまぁ!やろ!ビーチバレー。」


東郷さんは特に気にする風でもなく、
にっこりと笑った。


「そうだね。」


滑らかな動作で東郷さんは上に着ていたパーカーを脱ぐ。

周囲の視線が集まるのを感じる。


「協力、ありがとうね。麻ちゃん。」

「……」


いいな…
うらやましい。

東郷さんはスタイルも良いし、要領も良い。
可愛くて、自信があるんだろうな…。


「行くよっ、香月くん!」

「ああ。」


空中に山なりに投げられたボールを私はぼんやり眺める。


違う。

うらやましいのはルックスや要領だけじゃない。

本当にうらやましいのは、
香月くんにまっすぐ恋をしていることだ。


香月くんはアンダーハンドでいとも簡単にボールを返す。

「麻っ」

「えっ」

私の腕で跳ね返ったボールは変な方向に曲がって落ちた。


「ご、ごめん…」

「七瀬さんドンマイ!」
「下手くそ。」

「うっ、うるさい!」

「アハハ…っ」


可愛らしく笑う東郷さんを横目で見て、
すぐに視線をそらした。



いいな。

恋ってどんな感じなんだろう…