ひどく長く感じた数秒の後、

「プッ、アハハハハ…!!」

よっちゃんはお腹を抱えて笑い始めた。


「えっ、え?」

「アハハハハ…!麻いいよ!かっこいいよ!」

「かっこ…いい…?」


よっちゃんの予想外の反応に、
私が今度は口をあんぐり開ける。


一通り笑い終えると、
よっちゃんは深呼吸をして言葉を続けた。


「一人でよく頑張ってきたね。」


「……」


「私には麻の言ってることが本当かどうか
わからないけど、
麻は守ってる本人にキレられても嫌われても
そばに居続けたんでしょ?」


「…うん…」


「逃げ出さないってすごいことだよ。」


「っ……」


「私は麻が親友で誇らしい。」


「っ…う…」


毎日冷たく頬を撫でる涙が
今はそこに温かい感触を残す。


嬉しかった。

自分が苦しみながら進んできた道は
正解かはわからないけれど、間違いではなかった。

それを理解してくれる人がいる。


「つらくて毎日泣いてたの?」

「ちがう…。
予知夢を見ると、必ず涙が出るの。」

「……」

「でも、それだけじゃない。
ほぼ毎日香月くんが血まみれになるのを見て、
自分じゃ何も変えられなくて、
当の香月くんには嫌われて…
つらかった。」

「そっか…」


よっちゃんはポンと私の頭を叩いた。


「麻はホント、不器用なんだから。」

「っ…うぅ…」

「そりゃ毎日嘘ばっか言われてストーキング
されてたら、嫌いもするでしょ。」

「だってぇ…!」

「ハハ!不器用。」

「そうですよ、不器用ですよ!」

「バカ。」

「バカですよぉ!」


私が開き直って泣きながらそう叫ぶと、
からかうようによっちゃんは笑った。


「安心して。今日から私が味方だから。」

「うぅ…ツンデレだぁ。」

「何言ってんの、ほら。
ごはん食べよ。まず顔洗ってきな。」

「先食べる…」


涙でグシャグシャの顔のまま、
お弁当の中身を頬張った。

味よくわかんない…

でも…


「…おいしいぃ…」

「アハハ、顔めっちゃぶすだよ!」

「いいもん。」


よっちゃんに話してよかった。

私は久々の安心感を噛み締めた。