「香月くん…!ハァハァ…」

「お前…ずぶ濡れじゃん。アホか。」

「どうして先に帰るの!!
校門で待ってるって言った!言ったのに!」

「いや……は?」

「私のこと嫌ったって怒鳴ったっていいから、
一人で行かないで…!!」


私の剣幕に香月くんは愕然としている。

雨につられて、涙が込み上げる。


「っ…よかっ…たぁ…」


よかった。
本当に…


「…なんで今泣くんだよ…」

「え…」


香月くんは舌打ちをすると、
ずぶ濡れの私に傘を傾けた。


「バカでも風邪引くぞ。」

「あ…あり、がと…」


香月くんが私を傘に入れてくれるなんて
全くホント1mmも想像してなかったから、
驚きで思わず涙も止まった。


「自転車起こせ。通行の邪魔。」

「あ、はい…」

スタンドも立てずに道に置き捨ててた自転車を
起こす。

「っていうか…あれ、香月くん自転車は?」

「置いてきたけど。雨だから。」


え?
ってことは…


私はペタッとその場に座り込んだ。

もうずぶ濡れだから関係ない。


「アハハハ…!
私バカだ~!焦ったぁ!」


そうだよ。
大連くんも香月くんは自転車置いて歩いてった
って言ってたのに。

慌てて追いかけてきちゃった。


予知夢と違う。

香月くんは自転車に乗ってて、
トラックとぶつかるんだ。


「今度はなんだよ…
なんで笑うんだよ…」

「フフ…なんでもない…。安心しただけだよ。」

「お前やっぱ怖い。」


そう言いつつ、香月くんは私の上に傘を
かざしたままだった。


「大連くんも香月くんも優しいね。」

「知るか。
早く立てよ。」

「うん。あ、私もうびちょびちょだし、
自転車でぴゅーっと帰るよ。」

「へ……?」

「また来週ね。」


香月くんは目をまんまるくして笑顔で立ち去る
私を見ていた。