2月の体育館はまるで冷蔵庫だ。ひんやりなんて言葉じゃ全然足りない冷たさに、ジェットヒーターの暖めは全く追いついていない。壇上ではなにやら慌ただしくマイクの移動が行われていて、早く終わらないかなあと欠伸をかみ殺した。

気づけばもうもうすぐ卒業式を迎えようとしていて、今日は今年度最後の生徒総会が行われていた。制服姿での参加が必須であるがひざ掛けや上着の持ち込みは禁止されていなくて、わたしもマフラーに包まれながら話に耳を傾けたり傾けなかったり。

・・・もう3年生は卒業か。今までは歳をとるの嫌だなあなんて感情くらいだったけど、なんせ今年はしっかり寂しいのだ。
生徒集会の終盤、壇上で堂々と話す会長を見る。進行の声は惚れ惚れするほど美しくて、舞先輩も会長ももうすぐ卒業しちゃうのかと思うと寂しくてたまらない。

きっかけは小さな事件だったけど、でもそのおかげで知り合うことが出来て、こうやって仲良くなれて・・・既になんだかしみじみとした気分だ。2人とももう大学は決まっていると聞いて、さすがという感じ。

卒業までの間、後悔しないようにたくさん話せるといいなあ。
なんて思っていたある冬の日の午後、生徒会室に呼び出されたのは私とさっちゃんと春原くんだった。



「君たちに、極秘で相談したいことがあるんだ。」

そういった会長はいつになく真剣な顔をしていて、その眉間にはシワがよっている。

せわしなく生徒会室をあるきまった会長は、コホンと一度咳払いをして
意を決したように口を開く。

「実は・・・。」

会長の口から出てきた言葉は、コイワズライ。

「コイ、ワズ、ライ?」
「そう。舞が恋煩いをしているのかもしれなくて。」

ああ、恋煩い。中々使わないその単語に一瞬変換が出来なかった。危ない危ない。

舞先輩と、恋煩い。その2つの単語が結びつかなくて3人して首をかしげてしまう。いったいどこからそんな話になったのか。

会長の話によると、まずはどうやら最近まい先輩に元気がないらしい。何やら物憂げな表情をしていることが多く、ため息もよくつくんだとか。先生や友人が卒業という言葉を聞く度、卒業かあ、と呟いてまたため息が増える。特に生徒会室にいる時、仕事をしている時に寂しそうな気がして。
なんでそれが恋煩いに繋がるのか?当然出てくるその疑問に、会長は重々しくため息をついて、頭を抱える。

「俺は、見てしまったんだ…。」

生徒会室で仕事をしている最中、舞先輩はどうやらよく窓から下を眺めているらしい。それは前からなのだが、その日も窓から外を見ていた。その時、気になって会長も少し覗いてしまったのだという。
そこには中庭の細い路地があって、舞先輩がいつになく深いため息をつくと同時にそこに見えたのは、女の子に告白されている塚田くんだった。

「ああ。だから今日3人だけなんですね。」

春原くんと同じタイミングで私も納得をする。
そうだ。今日会長がコソコソと声をかけて来たのは私たち3人で、どうして塚田君だけハブなのかと(言い方)少し気にかかっていたのだ。そういうことか。

「でも舞先輩と塚田くんって仲いいんですか?」
「さあ・・・特に2人でいるところは見かけたことないが。」
「じゃあ恋愛的なものではないんじゃないでしょうか・・・」
「愛の深さ=関わりの深さとは限らないじゃないか!!!」
「ごめんなさい。」

私が言い終わる前に会長が鼻息を荒くするから反射で謝ってしまった。そうですよねごめんなさい。その最たる例ですもんね。会長は拳を握り締めて少し熱弁していて、いや本人の前でよくそんなに語れるな。

「と、とにかく・・・元気がないのが、心配なんだ。」

我に返った会長は咳払いをした後、そう言ってふう、とため息をつく。

「舞にはずっと世話になりっぱなしだからな。もし未練があるならそれをちゃんと叶えてやりたい。助けになってやりたい。」
「会長・・・。」
「変なお願いである事は承知している。けれど、力を貸してくれないか。」

そう言って会長が深々と頭を下げるから、慌てて顔を上げてもらった。さっちゃんと春原くんと3人で顔を見合わせて、小さく頷く。

そんなこんなで、私達4人の極秘調査が始まったのだった。