いつものようにスロットルを空吹かす。

「何か楽しみ」

 泉は一徹にしがみつく。

「バーもあるからな」

「あたしはこっちのほうがいい」

 腰に手を回した。

「じゃ、動くで」

 動き始めると、やっぱり早い。

 海に続く例の幹線の道を、真っ直ぐ転がして行く。

 信号が見えた。

 右に曲がると海、左に曲がると峠で、峠の先に温泉がある。

 青に信号が変わると、一徹はハンドルを左に捌いて、出逢った海を背に、峠へ続く国道を目指し、アクセルを少し強く開いた──。





【完】