しかも。

「やたらに怒鳴る先輩がいて」

 と耐えきれなくなった泉が愚痴をもらしたときも、

「怒れば人が動くと思い込んでる、視野の狭い人がよくやる陳腐な方法」

 とばっさり斬るのである。

「怒鳴ったって人は動かんし、むしろ反発して逆に動くのも出る」

 そういう先まで読めてない視野の狭い人間がよくやる、と一徹は指弾したのである。

 確かに。

 泉が待ち合わせに遅れても一徹が怒ったり怒鳴ることはなく、

「まぁ人はミスする生き物やからね」

 と笑って済ます。

「次は気をつけや」

 とはいうが、泉を責めたりはしない。

 そんな一徹に泉は、

「なんか甘えちゃうんだよねー」

 といいながらも、しかし三ヶ月ほど過ぎた頃には、すっかり心をゆるしていた。