「そこを曲がって」

 泉の指示のままハンドルをさばいてたどり着いたのは、ホームセンターの裏手の小さな黒い建物である。

 最初よく分からなかったが、

「休憩3500円」

 などと書いてあるのを見て、それがラブホテルであることに一徹は気づいた。

「…えっ?」

「だってさぁ、セフレって言っといて、ヤってないじゃん」

 それはそうだが、と思ったが泉と喧嘩をするのも下らないと一徹はそのまま駐車場に停めた。




 建物に入ると慣れた手つきで泉はボタンを押し、

「はい」

 鍵を受け取って、ずんずん中へと廊下を進んで行く。

 片手にヘルメットを提げたまま、一徹は泉の後ろを歩いてついてゆく。

 鍵に書かれた301の部屋の鍵を開けて入ると、真っ赤な絨毯にピンクの壁と白いベッド、小さなテレビにガラス張りの浴室…という普請になっていた。

「イッテツ…どうしたの?」

 あまりに慣れた様子の泉に一徹は硬直していた。

「いや…なんでもない」

「あ、もしかしてコッチだった?」

 と頬に手をあてたが、

「いや、それではない」

「じゃあ、何?」

 泉は訊いてきた。