ようやく修理が終わったから…というので直ったばかりのバイクを駆って、小一時間ばかり走った先にある浜辺に着いたのは、蒸し暑い夏も終わりの昼下がりである。

 こんな近場に砂浜がある…ということ自体を知らなかったらしく、

「まだまだ知らんことばっかりやな」

 とフルフェイスのヘルメットの奥で呟きながらも、何やら得をしたような気持ちで、入り口と書かれた看板の通りに右へハンドルを切った。